写真1●ITpro EXPO 2009におけるOneShotSearchの展示の様子。携帯電話を任意の部分に向けるだけで,関連した情報を表示できる
写真1●ITpro EXPO 2009におけるOneShotSearchの展示の様子。携帯電話を任意の部分に向けるだけで,関連した情報を表示できる
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 「パソコンの画面をマウスで操作するように,現実空間で携帯電話をマウスのようにポインティング・デバイスとして利用できることを目指した」(NECマグナスコミュニケーションズ 市場開拓推進部 主任 山崎 順一氏)---ITpro EXPO 2009展示会で,ITpro EXPO AWARDのCNET Japan賞を受賞したNECマグナスコミュニケーションズの「OneShotSearch」(写真1)は,携帯電話のカメラ機能を利用した空間検索技術である。

 「空間検索」とは,AR(拡張現実)アプリケーションや,GIS(地理情報システム)を利用したアプリケーションで利用する概念の一つ。「ユーザーから見えている範囲」や「ある施設の敷地内」のように,現実の空間の一部に対して,検索サービスを提供する。

ユーザーの興味に関連する情報を,携帯電話を向けるだけで

写真2●OneShotSearchの利用例。検索,ナビゲーション,地図表示,ゲーム,情報送信,Webページの表示,伝言機能などの例を示した
写真2●OneShotSearchの利用例。検索,ナビゲーション,地図表示,ゲーム,情報送信,Webページの表示,伝言機能などの例を示した
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 本技術は,携帯電話を「現実空間でのポインティング・デバイス」に拡張するもの。ユーザーが操作するデスクトップに相当するのは,携帯電話内蔵のカメラを介して液晶画面に表示されるリアルタイムで現実の画像。マウスとして操作するのが携帯電話で,内蔵するGPS機能,電子コンパス機能を組み合わせて“なにをポイントしているか”を検出する。ユーザーが興味のあるものに携帯電話を向けると,現実の画像に付加する形で,画像や文字などの情報を表示できる。ボタンを押してより詳細な情報を表示することもできる。同社がこれまで開発を進めてきた空間検索技術と,米GeoVectorが開発した「GViDポインティングプラットフォーム」技術を組み合わせて実現した。

 利用イメージは以下のようなものだ。(1)街頭の案内看板を携帯電話のカメラで写すと店舗までの道順や店舗の情報を表示する,(2)店舗への移動中は矢印や距離などのナビゲーション画面や地図画面を表示する,(3)店舗に入ると,店舗内の情報や,商品などの情報を表示する---。利用者が興味を示すものを携帯電話のカメラで写すだけで,QRコードの読み込みや空メールの送信などの手間をかけることなく,情報を提供できる(写真2)。

現実空間にウィキペディアやホットペッパーの情報を

写真3●OneShotSearchを使ったアプリケーションの例「かくれんぼゲーム」。自分の周囲に存在する目に見えないキャラクターをさがす
写真3●OneShotSearchを使ったアプリケーションの例「かくれんぼゲーム」。自分の周囲に存在する目に見えないキャラクターを探す
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 展示ブースでは本技術「OneShotSearch」を利用したゲームとして,かくれんぼゲームをデモンストレーションした(写真3)。携帯電話のGPSからの位置情報と,電子コンパスからの方向情報を利用して,ユーザーの周囲に存在する目に見えないキャラクタを探すゲーム。携帯電話が向いている方向にキャラクターがいる場合,画面上の「探索レーダ」が赤くなり,シャッターを切ると現実には見えないキャラクタが画面上に表示される。

 またNECビッグローブは,本技術を利用したアプリケーション「空間検索アプリβ」を参考出品した。例えばウィキペディアやホットペッパーなど,Webサイトの情報を現実の空間に表示する。ホットペッパーの情報検索メニューを選択すれば,ユーザーの携帯電話の画面の中にある飲食店の情報が,画面上に表示される。

 CNET Japan編集長の別井貴志氏は「携帯電話やスマートフォンのカメラ機能などをポインティングデバイスとして,GPS機能,電子コンパス機能と連携させ,空間検索技術と融合することにより,より直感的でユーザーにとって利便性の高い空間検索を実現した」と評価する。

 NECマグナスコミュニケーションズの山崎氏は「5年前から,PCのマウスのように現実の空間を検索したり操作したりする技術の実用化を目指してきた。当時は携帯電話のリソースがとぼしかったが,現在はリソースが強化され,カメラやGPS,電子コンパスのようなデバイスも充実してきた。目指していた世界を実現することができ感無量」と語る。NECマグナスコミュニケーションズは,イベントでの利用や,ゲーム,観光案内などの幅広い用途を想定し,市場の立ち上げと拡大を狙っている。