経営状況の悪化からスモール・スタートを余儀なくされたウィルコムの「WILLCOM CORE XGP」。現時点でもサービス・エリアは東京の山手線内の一部地域に限られている。一般ユーザー向けの無線データ通信サービスで巻き返すには,基地局を大幅に増やしてエリアを一気に広げることが有効だが,今のところ同社にその余力はなさそうだ。

 この悩ましい状況の中で,ウィルコムはXGPの新しい売り方を見付けたとしている。XGPは広域無線システムとしては珍しく,上り・下りとも最大20Mビット/秒の対称通信速度を持つ。光ファイバを引けない場所でも,上りが高速なXGPの特徴を生かしてユーザーを開拓できるというのだ。

 ウィルコムの売り方はこうだ。エリアを広げて幅広いユーザーを取り込むのではなく,ニーズが明確な企業や組織に対してスポット的にサービスを提供する。用途はインターネット接続ではなく専用線。例えば,広大な工場敷地内の拠点間を高速に結びたい企業内に設置する。敷設にコストがかかる光ファイバの代わりにウィルコムが基地局を置き,サービスを利用してもらうという戦略だ。場合によっては,基地局自体を企業に買い取ってもらい,回線の運用をウィルコムが行うケースも考えられるという。

 放送事業者の映像中継用途も考えられる。放送を中継する際に現在は専用の中継車を出動させているが,駐車スペースに困る場合があるという。上りが高速なXGPで映像を送信できれば,こうした問題を解決できる。しかも,中継ポイントは国会議事堂前や裁判所前など定番の場所があるため,面的に広くカバーしなくても多くのニーズを満たせる。XGPの使い方は,まだまだ考えられそうだ。