日経NETWORK 2006年1月号の記事をそのまま掲載しています。執筆時の情報に基づいており現在は状況が若干変わっていますが,ネットワーク図の書き方の基本は変わりません。最新状況は本サイトで更新していく予定です。

 ネットワーク図には要素を詰め込んでしまいがち。関係のある情報をすべて盛り込もうとすると,重要なところがわからなくなってしまう。そこで覚えておきたいのが省略の考え方。うまく省略すればずっと見やすいネットワーク図が書けるようになる。論理構成図の中でクライアント・パソコンは大きな面積を占めがちだ。そこでクライアント・パソコンを例に,省略の考え方を見ていこう。

 ネットワーク図には要素を詰め込んでしまいがち。関係のある情報をすべて盛り込もうとすると,重要なところがわからなくなってしまう。そこで覚えておきたいのが省略の考え方。うまく省略すればずっと見やすいネットワーク図が書けるようになる。

クライアントは思い切って省略

 論理構成図の中でクライアント・パソコンは大きな面積を占めがちだ。そこでクライアント・パソコンを例に,省略の考え方を見ていこう(図1)。

図1●クライアントは思い切って省略する
図1●クライアントは思い切って省略する
クライアントまで忠実に表現しようとすると見にくくなる。書き込むのはサブネットだけにして補足を表にまとめれば,図を一挙に小さくできる。
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 まずは,重要な情報を見極めること。クライアント・パソコンの場合,IPアドレスなどのネットワーク設定は,起動時にDHCPサーバーから取得することが多い。論理構成図でパソコン1台ずつに必要な情報は,情報コンセントなどのパソコンを特定する情報と,そのパソコンがどのサブネットに所属しているかという情報になる(図1のA)。

 論理構成図で大事なのは,サブネットそのものとサブネット間のつながり。それらに比べると,パソコン1台ずつがどのサブネットに所属しているかという情報の重要度は低い。サブネットの情報があれば,パソコン1台ずつの情報は思い切って省略しても影響は小さい。

 例えばパソコンと,パソコンを直接収容するLANスイッチを省略し,サブネットの情報に置き換える(同B)。サブネットは四角で囲って,サブネットの名前,用途,サブネット番号(注1)を書いておく。こうすると1台ずつパソコンを書くよりは,図がずっとすっきりする。

 さらに大胆に省略している例もある。例えば電通国際情報サービスでは,サブネットの要素やサブネット番号は論理構成図に書いていないという。こうして約3000台のクライアント・パソコンがつながる自社ネットワークの論理構成図を1枚にまとめている。「全体がわかることが大切。そのために,必要な情報を厳選した」(情報システム部の早野美砂アシスタントマネージャー)。

省略した情報は表などで管理する

 ただし,論理構成図上で省略すればそれで終わりというわけにはいかない。省略した情報は別のドキュメントにまとめておく必要がある。

 別のドキュメントといっても,新たに作る必要はない。LANスイッチとパソコンの接続を管理している既存の設定表に書き足すほうがよい。LANスイッチの設定表は,ポート単位で接続先を管理したりしている。物理構成図を補完するものだが,ここにサブネット情報を書き足してまとめておく。

 ポート単位でVLAN(注2)を分けているのであれば,設定表の中のポート単位の設定を説明する部分に,所属するVLAN ID(注3)を記入する(同C)。VLANを使わず,全ポートのパソコンが同一サブネットに所属しているような場合は,設定表の先頭にサブネットの名前や番号を書いておけばよい。

 新たなドキュメントにまとめるのでなく,LANスイッチの設定表にまとめることには,運用管理や設定を楽にする効果がある。例えばトラブルが起こったときに,設定表を見れば,物理構成図と論理構成図それぞれで関係するポイントがたどれるようになる。