RFP作成およびベンダー選定のプロジェクトにおけるスケジュールの組み方について説明しよう。プロジェクトで必要なタスクは,「RFP作成からベンダー選定までの流れ」の回に説明した通りである。これらのタスクを,標準的には3カ月~6カ月の期間でやるのが一般的であろう。スケジュールの期間を決めるには,以下の要因が影響してくる。

・システム構築の規模
・開発対象となる業務の複雑さや特殊さ
・企画フェーズでの成果の状況
・RFPプロジェクト・チームのメンバー数
・エンドユーザーの協力具合
・社内の意思決定のスピード(稟議処理にかかる期間や役員会開催頻度)

 システムの規模が大きければ,業務要求や技術要求などの検討に要する時間は当然増大し,RFPの枚数も増える。そうなるとベンダーも提案書作成により多くの時間が必要となる。

 また,調達フェーズに入る前の企画フェーズでどこまで,具体的な検討がなされたかも重要なポイントとなる。システム構築の趣旨が企画フェーズで既に明確になっていたり,いわゆるグランドデザイン策定が終わっていればスムーズにRFP作成に移ることができる。逆に漠然としたイメージしかなく,またエンドユーザーへの根回しもほとんどないような状態であれば,RFP作成作業の中でそれらを行う必要があり,当然のことながら時間を要する。

 RFP作成チームの人員も重要な要素だ。十分な人数が専任で担当できれば,早く進めることができるが,現実はギリギリの人数が本業と兼任で行うケースのほうが多いであろう。また,単に人数が多ければよいというものでもない。例えば,システム部門の要員だけが5人いるよりは,システム部門2人,エンドユーザー部門2人の計4人のほうが,人員数は少なくてもチームのバランスとしては良い。

 さらに,社内の意思決定も社長の「鶴の一声」で即座に決まるのであれば早くてよいが,逆に企業規模が大きくなるのに比例して稟議の階層が増えて,決裁までに時間がかかることが多い。また役員会が週一回の開催なのか,月一回の開催なのかでも,大きくスケジュールは変わってきてしまう。このような要素を総合的に見て,スケジュールを組み立てる必要がある。

 スケジュールの組み立てに当たり,ベンダーとの契約のタイミングから「逆算」して決める方法もある(図5)。プロジェクト・チームが結論(発注ベンダーの決定)を出してから,社内プロセスを経て役員会の決裁が下りるまでの時間はどれくらいか,契約内容の交渉・確認にどれくらいかかるか(ベンダーの契約書にそのまま従うか,社内法務部門や弁護士のチェックを行うか)など,社内の通例を基に期間を算出する。

図5●逆算してスケジュールを算出する方法
図5●逆算してスケジュールを算出する方法

 筆者の経験からいえば,ワンマン社長で非常に意思決定が迅速な会社でも最低2週間,一般的には1カ月程度は必要となる。すると,どんなに遅くてもベンダーの提案書を受領する時期は,契約の締結目標時期(開発プロジェクトのキックオフとほぼ同時期)の一カ月前であることが見えてくる。

ベンダーの提案書作成期間を勘案

 次に提案書の受領時期から,ベンダーが提案書を作成する期間を逆算してみよう。

 先にも述べたが,システムの規模や複雑さによって提案書のボリュームや内容が変わってくるので一律に算出するのは難しい。ただし,良い提案を引き出すには,あまり提案書作成期間が短いことは好ましくない。逆に,長く期間を設定すればよいというわけでもない。ベンダーは本格的な提案書を作成するとなると,それなりの陣容(人的リソース=コスト)を整える必要がでてくるからだ。提案書を作成するためのコストはベンダーにとっては必要経費とはいえ大きな負担であることは間違いなく,あまり悠長に構えることはできない。

 そのあたりを勘案すると,システムの規模や種類にもよるが,2週間~1カ月程度の期間が,一般的な提案書作成期間として設定できる。この提案書作成期間を加算すると,RFPを提示する時期は契約締結の1カ月半~2カ月前の時期ということになる。

 仮に,当初3カ月でRFP作成からベンダー選定まで終了させようと計画していたとすれば,プロジェクトの立ち上げから1カ月半でRFPを完成させる必要がある。先に述べたスケジュールに影響する要因をよく考えて,1カ月半で作成可能なのか,どうすれば可能になるのかを検討する。

 あるいは,逆にどれくらいの期間が必要なのか,2カ月,3カ月の期間がかかるのかどうかを,プロジェクト・マネージャやプロジェクト・オーナーは判断しなければならない。プロジェクト・チームに割り当てることができるメンバー数や,そのメンバーの経験・スキル,そしてエンドユーザー部門の協力具合,コンサルタントなど外部リソースによる補充の可能性などを総合的に考えて,RFP作成期間を決定する必要があるのだ。

 ただし,大企業の巨大なシステムは例外として,一般的な目安はある。冒頭に述べたように全体で3~6カ月を念頭において,計画を立てるとよいだろう。

永井 昭弘(ながい あきひろ)
1963年東京都出身。イントリーグ代表取締役社長兼CEO,NPO法人全国異業種グループネットワークフォーラム(INF)副理事長。日本IBMの金融担当SEを経て,ベンチャー系ITコンサルのイントリーグに参画,96年社長に就任。多数のIT案件のコーディネーションおよびコンサルティング,RFP作成支援などを手掛ける。著書に「RFP&提案書完全マニュアル」(日経BP社)。