RFP作成はシステム構築という大きなプロジェクトの上流フェーズに位置するイベントであるが,それ自体も一つの独立したプロジェクトととらえることができる。ここではRFP作成からベンダー選定までを「RFPプロジェクト」と呼び,その流れが一般的にどのようになっているのかを確認していきたい。

 まずはRFP作成のおおまかな流れを示す(図1)。

図1●RFP作成からベンダー選定の流れ
図1●RFP作成からベンダー選定の流れ

(1)社内検討
・情報化企画によりシステム構築を行うことを決定し,そこから引き継いで具体的な検討に入る時期を指す。別の言い方をすれば企画フェーズから調達フェーズに入る(本連載の「業務要求とアウトプット RFPにおける業務要求の洗い出しの目的とは」の図2参照)ということである。
・社内でシステム構築のおおまかな規模,コスト,スケジュール感を想定する。
・RFP作成プロジェクトをどのような規模,体制で立ち上げるか検討を行う。同時にどこの部署が主管となるかを決定する。

(2)プロジェクト・チーム(RFP作成チーム)の組成
・主管する部署の意思決定者がプロジェクト・オーナーとなることが望ましい。
・プロジェクト・オーナーがプロジェクト・マネージャ(PM)を選任し,さらに補佐するメンバーを適宜アサインする。
・さらにこのRFPプロジェクトの意思決定機関としての会議体を設定する(会議体の名称の例として,プロジェクト会議,ステアリング・コミッティなどがある)。

(3)趣旨(目的・背景・狙い)の取りまとめ
本連載の「趣旨(目的・背景・狙い)の実践的なまとめ方」を参照。

(4)業務要求の洗い出しと取りまとめ
本連載の「業務要求とアウトプット」を参照。

(5)技術要求,運用要求の洗い出しと取りまとめ
・本連載では技術要求,運用要求に関しては説明を割愛する。詳しい内容については「RFP&提案書完全マニュアル」(日経BP社)を読んでいただきたい。

(6)RFPの作成(成果物としての取りまとめ)
・上記の(3)~(5)の内容を取りまとめ,一つの文書としてRFPを作成する。
・特記事項の内容を検討し,記述する(本連載「RFPの基本構造」を参照)。

(7)RFPの提示

(8)Q&A

(9)提案書の受領
・上記の(7)~(9)の詳しい内容については「RFP&提案書完全マニュアル」(日経BP社)を読んでいただきたい。

RFP提示先は3~5社に絞り込む

 次に,ベンダー選定の流れを示す。

(1)候補となるベンダーのリストアップ
・システム構築の対象となる業務エリアの開発経験,当該業務パッケージの有無などから,商談を進めていくベンダーの候補を数社リストアップする。プロジェクトが既存システム再構築の場合は,当然既存システムを手掛けたベンダーも入れる。
・最初のリストアップの段階では,多めに候補を挙げたほうがよい。対象業務にもよるが,一般的なパッケージ製品のある業務が対象の場合は10社前後,パッケージがない固有業務の場合でもできれば5社以上に声を掛けたい。
・リストアップの方法としては,これまでに取引のあったベンダーに加え,IT雑誌の情報やインターネット検索,製品紹介セミナーへの参加などから情報収集する。

(2)RFIの発行
・リストアップしたベンダーにRFI(情報提供依頼書)を発行し,回答をもらう。
・RFIの内容は,対象業務に関する開発経験の有無,パッケージの有無やそのパッケージの導入経験,当案件に興味があるかどうか,開発を想定している期間にプロジェクトを組むことができるか,といった内容が中心となる。
・RFIの回答を見て,明らかに見当違いな回答であったり,商談に熱意のないベンダーがあれば,この段階で候補から外したほうがよい。

(3)ベンダーとの面談
・RFIを終了した段階で,できればベンダー各社と一度面談して情報収集をさらに行い,商談を先に進めていくベンダーを絞り込みたい。
・提案書評価の作業負担を考慮すると,RFPを提示するベンダーを3~5社程度に絞り込んだ方がよい。この絞り込みを行うために,ベンダーに数枚の簡単な「プレ提案書」を作成してもらい,それを評価する場合もある。

(4)提案書の受領

(5)提案書の評価
・ベンダー各社から出された提案書を熟読し,RFPを評価軸として比較評価を行う。
・評価者は複数人として,なるべく多くの視点を入れるようにする。
・評価は点数付けや順位付けなどを行い,優劣を明確にする。

(6)プレゼンテーションの実施・評価
・提案書だけで評価を行う場合もあるが,できるだけベンダーにプレゼンテーションを実施してもらうほうがよい。
・提案内容に関する質問を積極的に行い,提案の優劣をより明確にする。
・プレゼンテーションの実施者は,ベンダーのPM候補者を指名してやってもらうのがよい。そこでPMの力量や人となりを見ることは重要である。
・評価は提案書同様,点数付けや順位付けを行う。

(7)発注先ベンダーの決定
・上記(5),(6)の評価の合計と,さらに見積もり額の妥当性を検討し,最終的な評価を行い,発注先となるベンダーを決定する。
・ベンダー決定を役員会などに上申し,会社としての意思決定を行う。

永井 昭弘(ながい あきひろ)
1963年東京都出身。イントリーグ代表取締役社長兼CEO,NPO法人全国異業種グループネットワークフォーラム(INF)副理事長。日本IBMの金融担当SEを経て,ベンチャー系ITコンサルのイントリーグに参画,96年社長に就任。多数のIT案件のコーディネーションおよびコンサルティング,RFP作成支援などを手掛ける。著書に「RFP&提案書完全マニュアル」(日経BP社)。