文章を書くときに,語尾を「です・ます調」にするか「だ・である調」にするか迷うことがあると思います。文書を書くうえで語尾は,文章のイメージやリズムを作り出す大切な要素です。今回は,語尾に関するテクニックを紹介します。

 では,実際の例文を使ってトレーニングをしてみましょう。以下のメール文を見て,何が問題かを考えてみてください。

どこが問題?
件名:提案書作成について

正田様
お疲れさまです。佐藤です。
先日伝えていたS社への提案書ですが下記のような内容で作成していただけますでしょうか。

<目的>
1 予算が限られているため(約80万)ベーシックの顧客管理システムAの作成を希望しております。
2 今後拡張する可能性もあるので,その余地のあるシステムを作成する。

<提案書の方向性>
1 S社と業種が近いT社への以前の提案書をベースにする。
2 訴求ポイントは利便性なので,その点を強調します。

<スケジュール>
期限は9月28日まででお願いします。
最終締め切りが10月2日なので,その前の9月30日までに社内チェックを済ませる予定です。

以上お手数ですがよろしくお願いいたします。

ここが問題! 文章に統一感がなく,読みにくい

 この文書は,文章のリズムが崩れ,読みにくくなっています。語尾に注目すると,「です・ます調」と「だ・である調」が混在していることがわかります。

 「です・ます調」と「だ・である調」は,どちらかに統一すべきです。では,どちらに統一するのがよいのでしょうか。

これで解決! 語尾の特徴をつかんで使い分ける

 それを決めるためには,まずは,「です・ます調」と「だ・である調」それぞれの語尾の特徴を理解する必要があります。「です・ます調」で統一すると親しみやすくなります。その半面,一文が長くなり,文書全体が少し冗長的な印象になります。一方,「だ・である調」で書くと説得力が増します。その半面,文書全体が高圧的な印象になります。

●です・ます調
メリット:柔らかい,親しみやすい
デメリット:冗長に感じる,文字数が多い
●だ・である調
メリット:説得力がある,文字数が少ない
デメリット:固い,高圧的

 語尾は,文書によってうまく使い分けることが重要です。語尾の特性を考えたとき,使い分けは下記のようにするとよいでしょう。

●です・ます調…手紙全般,挨拶文,お知らせ,スピーチ原稿
●だ・である調…レポート,報告書,論文

 メールで挨拶や依頼をするときは,「です・ます調」を使って親しみやすさを表現するのがいいでしょう。ただし,「記書き」に当たる部分は,メールの場合であっても「だ・である調」で書くとスッキリした印象になります。「記書き」とは,文書中に「記」と書いてそれ以下に内容を個条書きにする手法です。「記」と記さないケースもあります(今回のケース)。

 この原則に沿って,前出のメール文を書き直してみましょう。以下のようになります。

改善後

件名:提案書作成について

正田様
お疲れさまです。佐藤です。
先日伝えていたS社への提案書ですが下記のような内容で作成していただけますでしょうか。

<目的>
1 予算が限られているため(約80万)ベーシックの顧客管理システムAの作成を希望している。
2 上記を今後拡張する可能性もあるので,その余地のあるシステムを作成する。

<提案書の方向性>
1 S社と業種が近いT社への提案書をベースにする。
2 訴求ポイントは利便性なので,その点を強調する。

<スケジュール>
提出期限:9月28日
最終締め切りが10月2日なので,その前の9月30日には社内チェックを済ませる。

以上お手数ですがよろしくお願いいたします。

 最初と最後のお願い文を「です・ます調」で統一することにより,文書全体を通して丁寧な印象を与えるメールになりました。また,記書きになっている中身の部分を「だ・である」調にしたことで,伝えたい部分が説得力を持ちました。さらに,語尾を「~する」で統一したことにより,読みやすいリズムもできました。

 どの文章にどちらの語尾を使えばいいかは,慣れてくれば自然と使い分けられるようになります。慣れるまでは,語尾のそれぞれの特徴を思い出して,意識しながら使い分けるとよいでしょう。