本研究所では、アジャイル開発を素材に、より良いシステム開発のあり方を求めていく。モデリングや設計などを学ぶことも大切だが、開発手法そのものを見直すことは、より良いシステムを作るだけではなく、開発を担当するチームが成長し、個人の満足度も高まると考えられる。第1回は、2008年4月に新社会人となった研究所長の私が、なぜアジャイルと出会い、どこに楽しさを感じているかをお伝えします。

 みなさん、初めまして。森下・アジャイル研究所の所長を務める森下真衣です。2008年4月に新社会人となり、元KDDIのCIO(最高情報責任者)だった繁野高仁さんの情報システム総研で働くことになったことが、アジャイル開発との出会いでした。

 私は実業務として、ウォーターフォールによる開発を経験したことがありません。ただ、学生時代にはウォーターフォールを参考にして開発していました。“ものづくり”の楽しさを感じてはいましたが、開発をうまく進められないことに苛立ち、いつまでも到達できないゴールに向かっているようで苦い思いもしました。

 「次こそは良い情報システムをスムーズに開発をしよう!」と意気込み、そのために問題を解決する能力や問題を先読みする能力が必要だと考えていました。ですが、納期が近づくと研究室はいつもデスマーチに近い状態だったことは、ご想像の通りです。

 より良い情報システムを作るためには、モデリングや設計などを学び、問題の解決策を見つけ出せる能力を身に付けることが重要です。しかし、アジャイルを経験した今は、実際に動く情報システムを開発しながら、ユーザーとともに情報システムを検証することで、正解に徐々に近づけるという取り組みも重要だと思っています(図1)。

図1●正解に徐々に近づくアジャイル開発
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 またアジャイルなアプローチには、より良い情報システムを作るということだけとどまらず、開発を担当するチーム自体が成長し、チームメンバー一人ひとりの満足度も高いというメリットがあるように思います。私自身、学生時代に経験した開発とは全く違う手法に驚き、そしてとても楽しめました。

 本研究所では、「基幹系」と呼ばれるような大規模システムにおけるアジャイル適用の可能性を検証していきます。今回は自己紹介代わりに、私が参加したアジャイル開発プロジェクトの概要と、開発者視点からみたアジャイル開発の良さ・楽しさを紹介してみましょう。