「地震被災地の道路情報を配信する」――。これまでにない試みに、ホンダが取り組んでいる。カーナビゲーション・システムを利用して、どの道路が走行できるのかといった情報を共有する。被災地における復旧作業や、そこで暮らす人々の生活をバックアップするのが目的だ。

図1●地図上に走行不能な道路はどこか表示する
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写真1●RSSを使うことで、カーナビ上でも口コミ情報を参照可能にした
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 ホンダが2009年9月1日に運用を開始したのが、「災害時移動支援情報共有システム」。震度5弱以上の地震があった場合に、被災地で通行可能な道路の情報を提供するサービスを無料で提供する。システムは、地図情報サービス事業を手がけるインクリメントP、ゼンリンデータコムと共同で構築した。

 災害時移動支援情報共有システムの基本機能は、ブラウザ上の地図に、どの道路が通行可能かを表示すること(図1)。この情報を参照することで、救援物資を運ぶ自動車などが、出発後に実際には通行できず救援が遅れるといった不具合をなくす。道路情報に加え、「このガソリンスタンドは給油可能」「ここトイレは使えなくなっている」といった、被災地での生活に役立つ口コミ情報も収集し配信する。

 口コミ情報は、カーナビが持つRSS受信機能で受け取り、自動車の現在位置に近いものから順に表示する(写真1)。ただし現時点では、ホンダの純正カーナビでしか閲覧はできない。

道路の被災情報が管轄者別に分散する

 災害発生時の道路の被災状況については、国土交通省や自治体もその把握に努めている。しかし国道の管轄は国交省、県道や市道は自治体と、管理主体ごとに情報が分散してしまうのが実状だ。しかも被災状況の調査は、国交省や自治体の職員が直接現場を見て情報を集めるという力仕事であるため、情報量や即時性には限界がある。

 これに対し、災害時移動支援情報共有システムでは、自動車の走行実績を集約することで、道路の被災情報を把握する。どこが走行不能なのかを特定するわけではないが、どの道路が走行できたかという情報は提供できる。完璧な情報でなくても、被災者や支援者の役には立つのではないか、との考え方に基づいている。