第22回の『PMOは火消しの「遊軍」たれ 』で述べたように,不測の事態に即時対応できるよう,PMO(あるいはプロジェクトマネジャ)は常にある程度の余裕を持っているべきだ。それでは,PMOはどのように余裕を作り出せばよいのか。今回は,PMOが余裕を作り,本来PMOがすべき仕事に時間を割くにはどうすればよいのかを考えてみたい。

後藤 年成
マネジメントソリューションズ マネージャー PMP


 PMOは,進捗報告書のとりまとめやプロジェクトの課題管理など,それなりのルーティン業務を持っていることと思います。PMOが“余裕”を作り出すためのポイントは,ルーティン業務を徹底的に自動化することです。

 多くのプロジェクトでは,進捗管理や課題管理などにMicrosoft OfficeのWordやExcel,Outlook,Projectなどを利用していることと思います。これらのツールには,ルーティン作業を自動化するために便利な「関数」や「マクロ」といった機能があります。重要なことは,最初は多少工数をかけてでも,これらのツールを駆使するために徹底して自動化を進めることです。

 自分でマクロなどを組むのが苦手な方も,少し勉強すればすぐに慣れます。「いまさらマクロなんて」と抵抗のある方は,ツール作成の部分を他の人に依頼してもいいと思います。大抵,マクロが得意なメンバーはプロジェクトに1人ぐらいはいるものです。とにかく,「徹底的」に作り込むことが重要です。

PMOとしての存在価値を間違えるな!

 例えば,私が実際に在籍したあるプロジェクトでは,進捗管理に関して下記の11種類の資料を取りまとめて,1つの進捗資料を作っていました。

(1)進捗アジェンダ
(2)前回の議事録
(3)マスタースケジュール
(4)各チームのWBS
(5)各チームの進捗報告書
(6)課題一覧
(7)課題解消状況のグラフ
(8)変更管理一覧
(9)各チームごとの変更管理状況のサマリー
(10) テストの障害状況(障害数や障害解消数などのグラフ)
(11) テストの進捗状況(テストケース消化数や残ケースのグラフ)

 進捗会議の準備をしたことのある方はすぐ分かると思いますが,上記の資料を取りまとめたり,グラフを作成したり,印刷やホチキス止めなどをしたりすると,場合によっては半日以上の時間をとられてしまいます。当時の進捗会議の準備担当者は,毎週の準備に半日以上かけて取り組むことが自分の仕事だと思い込み,それを自慢にさえ感じていました。

 この作業が1回きりであるならば仕方がないでしょう。しかし,毎週の進捗会議のたびに半日も時間をとられるのでは,生産性の低さから見てたまったものではありません。