企業向けの動画配信支援サービス「ビムーブVIDEO」を提供するビムーブ。サービス開始から約1年半で大手企業を含む100社以上にサービスを提供する。収益化が難しいとされる動画関連ビジネスにあって、どう事業拡大していくのか。同社の伊藤靖社長に、起業の経緯や今後の展開について聞いた。(聞き手は島田 昇=日経コンピュータ)

ビムーブVIDEOとは、どのようなサービスなのか。

 企業が自社サイトで動画を配信できるようにするためのサービスだ。SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)として提供する。様々な形式の動画を持つ企業は、ビムーブVIDEOにより、配信用のMP4やFLVの形式に変換された動画のソースが得られるので、自社サイトに貼り付けるだけで配信ができるようになる。

 サービスの特徴は三つある。まずは操作が圧倒的に簡単なことだ。配信したい動画さえ用意すればよい。画面の指示に従って操作するだけなので、PCの操作に詳しくない人でも扱える。次は高画質であること。企業向けの動画配信支援サービスで国際標準の「H.264」に対応しているサービスは少ない。最後がPCと携帯電話の両方に配信できることだ。月額5万円から始められる同種のサービスは他には、ないのではないか。

2014年内にも上場を計画

 2008年4月にサービスを開始した。それまで同種のサービスの料金相場は月額40万~50万円だった。安価なことも支持され、今では大手ゲームメーカーのセガなど122社が利用している。

 2009年10月にはインテック・アイティ・キャピタルと三生キャピタルの運営ファンドを割当先とした総額4000万円の第三者割当増資を実施した。2010年1月をメドに単月黒字転換する見通しで、同年3月には利用企業が200社に達するだろう。この勢いのまま伸び続けられれば、2014年3月期の決算をもって2014年内にも上場する計画を立てている。

動画共有サイトの「YouTube」などを使って無料で動画を配信する企業も増えている。視聴者も増やしやすい。

 「YouTubeではセキュリティ面が不安だ」という企業は多い。また、大企業の中にはフィルタリング規制を実施していることもあり、YouTubeへのアクセスが禁止されてしまう。結果、視聴者が限られる。またサイトの運営ポリシーにそぐわないということもある。

 確かに、人気の動画共有サイトは人が集まりやすく、話題になれば視聴者を増やしやすいという環境ではある。だが企業には、まだまだ活用しづらいのが現状だ。

動画配信に着目したきっかけは。

 前職でインディーズ系の音楽配信サービスをやっていた。だが、「音楽は(ベンチャー企業が手がける配信プラットフォームとして)市場の広がりがない」と感じていた。一方で、動画はまだ使い勝手の良いサービスが少ない。さらには一般消費者向けにメディアとして提供する動画共有サイトは、利益を出すことが難しいことも明らかになりつつあった。