米Microsoftは2009年11月第2週,Windows 7など同社のほかの主要製品に続けとばかりに「Exchange Server 2010」の販売を開始した。この製品に関する同社のメッセージは,これまでの製品と同じだったことが,今年の同社の新製品について売り文句をずっと聞いてきた人たちにはよくわかるだろう。Microsoftは「当社の最新技術を満載した製品で,長期的なコスト削減につながる」と説明する。キャッチフレーズはやはり「大きな成果を少ないコストで」だ。だが筆者は,少なくなるのは“支出額”ではなく,今後の“投資額”だと考える。

 MicrosoftがExchangeに採用したマーケティング戦略は,「Windows Server 2008 R2」や「SQL Server 2008 R2」と一致する(ちなみに,SQL Server 2008 R2は2010年までリリースされない)。これらの製品では,さまざまな方法でコストを削減できる。例えば,安価なハードウエア(大量のデュアルコア・プロセッサ搭載サーバーでなく,少ないマルチコア・プロセッサ搭載サーバーで使えることなど)に対応していたり,統合などで旧来技術(多くの場合Microsoft以外の技術)を排除できたりすることや,顧客の高まる需要により合わせたエディション構成などによってコストを減らす。さらに,これまでのバージョンと同様に,生産性と効率性も向上させる。

 Exchangeの場合,こうしたコスト削減策は次のように実装された。まず,これまで高コストのSANを必要としていたのだが,安いストレージ装置も利用できるようになった。また,ユニファイド・メッセージング機能が強化されたため,特定ベンダーの電話/ボイス・メール用システムをExchange 2010に置き換えられる。サードパーティ製アーカイブ・ソリューションも不要になった。

オンライン版Exchangeも「2010」に移行

 そして,製品エディションはこれまでと同じままで,Microsoftはオンライン版Exchangeのユーザーもすべて最新版に移行させる。しかもMicrosoftは11月第1週,オンライン版Exchangeの大幅な値下げを発表した(「SharePoint Server」と「Office Communications Server」も同様に値下げする)。

 製品改良という従来の視点でみると,確かにExchange 2010には改良点がたくさんある。Exchange用Webインタフェース「Outlook Web App(OWA)」(旧名称は「Outlook Web Access」)が新版になって,よりデスクトップ版の「Outlook」の操作性に近づいた。「Mail Tips」と「Conversation View」などの新たなプロダクティビティ機能(「Outlook 2010」「OWA 2010」と統合されている)や,「Office Communicator」と連携するプレゼンス/チャット/アドレス帳機能も備える。

 Microsoftは「間違いなく顧客は『積極的』にExchange 2010を導入する。導入コストは6カ月以内に回収できる」と自信に満ちている。だが,同社の言う通りに,本当にコスト削減できるかが問題だ(それに,顧客は長期的なコスト削減というチャンスに飛びつくだろうか)。

 もちろんユーザーにとって一番簡単な対応方法は,何もしないことだ。とはいえ,筆者は現在Exchangeを使っているユーザーならば,たいていの場合で電子メール用インフラを(できればオンライン版Exchangeで)最大限オフサイト化するとよいと思う。Exchangeによる最大のコスト削減効果は,強力だが複雑なサーバーを社内運用しないことで得られるのだ。

 Exchange 2010は間違いなく“買い”だ。ただし,可能な限りオンライン版を利用しよう。そうすれば,最大のコスト削減とメリットが得られる。

関連記事(英文):
・「Exchange 2010:The Migration Story」(「Exchange 2010への移行」)
・「Exchange 2010:Problems, Problems, Problems」(「問題だらけのExchange 2010」)
・「Exchange 2010:Helpful or Harmful to Third-Party Vendors?」(「Exchange 2010:サードパーティの運命は?」)