写真●ITproの田中淳副編集長

 「IFRS(イファース)すなわち国際会計基準のことを言葉だけでも聞いたころがあるIT関係者は多いはず。だが,それがどんなものなのか,自分たちにどれくらいの影響があるのかということになると,よく分からないというのが現状だと思う」---。ITproの田中淳副編集長(写真)は,2009年10月29日のITpro EXPO講演会「最低限押えておきたいIFRS対応5つのポイント」において,開口一番,このように指摘した。

 田中副編集長が伝えたいメッセージは大きく2つ。「1つは,IFRSが結局何を目指しているのか,IFRS対応とは何を意味しているのか,その心を理解してほしいということ。もう1つは,経営とITの距離がどの程度なのか,IFRS対応はその状況を推し量る大きなきっかけになるということだ」。

IT専門家調査で「J-SOXに続く大きなテーマ」と半数が認識

 田中副編集長は,日経BPコンサルティングが2009年7月に実施した調査「IT専門家4000人に聞く,IFRS対応の実態」を例示し,「IFRSの認知度はまだ低い」と言う。同調査で「意味内容や企業情報システムに与える影響についても知っている」という人は回答者全体の4.5%にすぎなかった(図1)。「概要は知っている」は17.9%,「言葉を聞いたことがある」は41.3%。これらを合計しても6割強にしか達しない。

図1●IFRSの認知度(N=3863)
出典:日経BPコンサルティング2009年7月調査「IT専門家4000人に聞く,IFRS対応の実態」

 では,どんなことを知っているかを尋ねると(図2),一番多かったのは「J-SOX(日本版SOX法)に続く大きなテーマとされている」(53.8%),それとほぼ並んで2番目に多かったのが「会計システムの改修を要する場合がある」(52.8%)。この2つはIFRSのことを少しでもかじっていれば分かるだろうと田中副編集長は言う。

図2●IFRSに関する認知項目(N=2460,IFRSを知っている回答者のうち)
出典:日経BPコンサルティング2009年7月調査「IT専門家4000人に聞く,IFRS対応の実態」

 逆に回答数が少ない項目を見ていくと,「英文ではInternational Financial Reporting Standardsと表記する」と知っている人は21.8%程度。「製品販売の基準が出荷時から検収時に変更されることが想定される」という収益認識の変化に気づいている人も21.2%。もっと少ない項目を見ると「会計システムでは,複数の会計基準に対応した複数帳簿の機能が必要となる」が17.6%。「これは,会計システムを丸ごと変えないといけない場合もあれば,既存の会計システムで対応できる場合もあるということなのだが,それくらいの現実感を持っている人は本当に少ない」と田中副編集長は指摘する。

 まとめると,「大方の人は漠然としたイメージはつかめているけれども,詳細はピンときていないと言える」(田中副編集長)。