「IPアドレス枯渇 5つの誤解」と題した講演を行う山崎記者
写真1●「IPアドレス枯渇 5つの誤解」と題した講演を行う山崎記者
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 2009年10月29日に開催された「ITpro EXPO 2009」展示会のメインシアター講演において,日経NETWORKの山崎洋一記者が「IPアドレス枯渇 5つの誤解」と題した講演を行った(写真1)。

 山崎記者は講演の冒頭,IPv4アドレス枯渇に関していくつかの誤解があることを指摘した。その誤解は次の五つである。

(1)そもそもIPv4アドレスは枯渇しない
(2)アドレスが枯渇するとIPv4を使えなくなる
(3)アドレス枯渇後はIPv6時代になる
(4)枯渇対策は進んでもインターネットは特に変わらない
(5)ISPが枯渇対策をするとGoogleマップの表示が欠けて見られない

 IPv4アドレスの枯渇はインターネットの事業者だけでなく,企業ユーザーや個人ユーザーを含むすべてのインターネット・ユーザーに関連する問題である。会場には,対策方法や最新動向をつかもうと,多くの来場者が集まった。

IPv4アドレスの大元の在庫は必ずなくなる

おおもとの在庫はやっぱり底をつく
図1●おおもとの在庫はやっぱり底をつく
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 山崎記者が最初に取り上げたのは,「そもそもIPv4アドレスは枯渇しない」という誤解である。山崎記者はまず,IPv4アドレスの在庫状況を報告。「2009年10月28日の時点で,IPアドレス管理組織であるIANA(Internet Assigned Number Authority)の在庫は,1677万7216個のアドレス・ブロック(/8の範囲)が26ブロックある。2007年は13ブロック,2008年は9ブロック,2009年は10月までに8ブロックが消費された。この消費ペースから考えると,IPv4アドレスの在庫が底をつくまであと2年数カ月くらいだろう」と予想した(図1)。

 そのうえで山崎記者は,IPv4アドレスの枯渇予測として有名なAPNIC(Asia Pacific Network Information Centre)のジェフ・ヒューストン氏による枯渇予測日を紹介(関連記事)。「現時点でのジェフ・ヒューストン氏による枯渇予測日は2011年11月20日である。こう考えると,IANAの在庫は3年を待たずして底をつくだろう」と述べた。

 ただし,IPv4アドレスの最近の消費傾向について山崎記者は,「ジェフ・ヒューストン氏の枯渇予測は,過去の消費動向に景気動向などの要因を加味したものになっている。2008年8月の時点での枯渇予想時期は2011年2月だった。総じて後ろ倒しの傾向がある」と語った。