写真1●日経コンピュータの目次康男記者
[画像のクリックで拡大表示]

 日経コンピュータはCIOやシステム部長対象にした「IT投資動向調査」など各種調査を実施している。それらによると,2008年秋以降にIT投資を凍結した企業のうち,3分の1が2009年8月の時点でその解除を検討または実施している。日経コンピュータの目次康男記者(写真)は「後れを取らないように動き出すときが来ている」と指摘する。2009年10月29日,「ITpro EXPO 2009」展示会のメインシアターで実施した「2010年,IT部門はこう動く」と題する講演の一幕だ。

IT投資はいつ回復するのか

 目次記者はまず,昨年秋から急激に落ち込んだIT投資が現在どうなっているかを解説した。「世界同時不況でIT投資は,天気に例えるなら土砂降りの状態になった。2009年4~9月のデータを見ても,守りのスタンスは続いている」。

図1●2008 年秋以降のプロジェクト凍結・延期状況と再開機運の高まり
出典:日経コンピュータ 2009年9月30日号 p.28
[画像のクリックで拡大表示]

 それが,現在大きく二つの方向に分かれつつあるという。運用保守分野は依然コスト削減の圧力が続いている半面,新規開発分野では薄日が差している。新規開発に対する投資機運の盛り上がりを,目次記者は次のように説明した。

 「日経コンピュータの調査では,2008年秋以降にプロジェクトを凍結または延期した企業が約半数もある。それが2009年8月末の時点で,凍結した企業のうちの3割が『既に一部のプロジェクトが再開した』『プロジェクトを再開する準備・検討が始まった』と回答している」(図1)。

図2●期間中に執行した新規開発/運用・保守予算額の前四半期比
出典:日経コンピュータ 2009年9月30日号 p.29
[画像のクリックで拡大表示]

 では,投資額はどう推移しているか。「IT投資の執行額を見ると,開発分野が7~9月の段階でDI(「増やす」から「減らす」を引いた値)がそれまでのマイナスからプラスに転じた。10~12月も維持していく見込みだ」という(図2)。特に,売上高500億円以上の企業は既に開発投資が動き始めている。4~6月は大きく絞っていたが,7月以降はプラスに転じており,回復基調に入ったと見てよい。運用保守分野は依然マイナス基調だが,それは運用保守分野を絞って開発案件に回していこうという動きが影響していると見られる。

 「経営者は,景気が底を打つ半年くらい前には,攻めのスタンスに転じなければならないという意識を持っている。もしかしたら景気はまだ底を打っていないかもしれないが,IT投資に対する経営者の意識は転じている可能性が高い」。