新たな情報発信媒体として「デジタルサイネージ(電子看板)」が注目されている。デジタルサイネージという言葉自体は知らなくても,電車の扉の上などに設置された液晶ディスプレイに動画や静止画で表示されている広告を見たことがある人は多いだろう。また,店頭に設置されたディスプレイに商品広告などが映されているのを見たことがある人もいるだろう。これらはすべて,デジタルサイネージの例である。

 デジタルサイネージは一見しただけでは,テレビのコマーシャルと変わりがないように見えるかもしれない。テレビとの違いは,ネットワーク経由でコンテンツを配信したり,内蔵記憶装置に大量にコンテンツを保持したりしておくことにより,その場所や時間に合わせたコンテンツを選んで表示できることにある。ターゲット層に向けて,より的確に情報を提供できることが特徴だ。

写真1●日経ニューメディアの松浦龍夫記者
写真1●日経ニューメディアの松浦龍夫記者

 デジタルサイネージの仕組み自体は比較的簡単だが,思うような効果をあげることは簡単ではない。ITpro EXPO 2009の展示会で「デジタルサイネージ作成のツボ」というテーマで講演をした日経ニューメディアの松浦龍夫記者(写真1)は,街中の大型ビジョンやコンビニのレジ横ディスプレイ,スーパーの商品棚にあるディスプレイを例に挙げて,それらに表示されているコンテンツを見ていますかと問いかけ,「工夫のない,単純なデジタルサイネージには誰も目を向けない」と指摘する。

工夫の方向性は大きく四つ

 松浦記者は,デジタルサイネージ活用の工夫の方向性として「デザイン」「コンテンツ」「場所」「雰囲気」の四つを挙げ,事例を紹介していった。

 デザインに関する工夫の例として挙げたのは,「キャラクター」「迫力」「動き」「大きさ」「3D映像」などである。最初の例として,猫用トイレ用品の宣伝に,猫の駅長として有名な和歌山電鉄「たま駅長」をキャラクターと使っているデジタルサイネージに言及。広告のターゲット層に強く訴求できるだろうとした。

 さらに,銀座のApple Storeに設置してある「向かってくる迫力のあるデジタルサイネージ」(写真2),韓国のソウルの街角で見つけたという「携帯電話の形をした,回転しているディスプレイ」(写真3),同じソウルの地下鉄の駅にあった「大きさで勝負,のディスプレイ」(写真4)などを紹介。人目を引くためには工夫が必要であることを指摘した。

写真2●銀座のApple Storeに設置してあるiPhoneの宣伝
写真2●銀座のApple Storeに設置してあるiPhoneの宣伝
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写真3●携帯電話の形をしたディスプレイが回転する
写真3●携帯電話の形をしたディスプレイが回転する
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写真4●横3メートル,縦2メートルのディスプレイ
写真4●横3メートル,縦2メートルのディスプレイ
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 デザイン面での工夫の変わりだねとして,auショップでたくさん並べた携帯電話の画面を連携させてコンテンツを表示させている事例(写真5)や,タワーレコードで3次元映像を使っている事例(写真6)について説明。3次元映像に関しては,日本ユニシスとマクニカネットワークスが中部国際空港で実施した実証実験で半数近くが注目した実績があるとして,今後,有望であろうと述べた。

写真5●複数の携帯電話の画面を連携させた宣伝
写真5●複数の携帯電話の画面を連携させた宣伝
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写真6●タワーレコードの3次元映像
写真6●タワーレコードの3次元映像
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