タイトル
写真●日経ソリューションビジネスの大山繁樹副編集長

 今や大手企業の74%がBI(ビジネス・インテリジェンス)システムを導入している。だが,半数ほどはデータの参照や省力化にとどまっている---。日経ソリューションビジネスの大山繁樹副編集長(写真)は,「ITpro EXPO 2009」の講演で,BIの現状をこう分析した。

 さらに,資生堂など5社のユーザー企業の事例を通じて,BIシステムを経営戦略に取り入れるためのポイントなどを紹介した。併せて,BIシステム導入の前段階として,帳票を電子化して紙による出力を減らしたり,利用者自身がデータを閲覧・分析できるようにするだけでも,狙いが明確であれば大きなコスト削減効果を得ることが可能だと指摘した。

BIシステムの導入実態を分析

図1●連結売上高1000億円以上の企業600社を対象に調査したBIシステムの導入状況(アビームコンサルティング調査より)
図1●連結売上高1000億円以上の企業600社を対象に調査したBIシステムの導入状況(アビームコンサルティング調査より)

 BIに関してアビームコンサルティングが連結売上高1000億円以上の企業600社を対象に実施した調査によると,74%の企業がすでにBIシステムを導入している(図1)。しかしその一方で,BIシステムで利用するデータの品質に問題が発生しているとする企業も多く,導入企業の62%が「一部発生している」,7%が「業務に支障が出ている」と回答している。データ品質問題の内容は,多い方から順に「数値に整合性がない」(35%,複数回答,以降同),「データが欠損」(32%),「データが重複」(19%),「あり得ない数値」(16%)など。現場では,データを入力する時点ですでに担当者が間違えていることもあるという。

 BIシステム導入で実現した効果については,ほとんどの企業が「多様な切り口によるデータの参照」(96%),「レポート作成作業の省力化」(96%)などを挙げる一方で,BIシステムの最終的な目的とされる「問題点の原因究明」(49%),「業務プロセスの改善」(47%)まで実現できている企業は半数に満たない(図2)。大山副編集長は,これは分析スキルが低いことも原因の一つだとする。例えば,ある企業で商品Aと商品Bの売り上げを比較したところ,Aの方がよく売れていたので,商品Bの販売を中止したら,商品Aの売れ行きも鈍ったという。実は,商品Aの購買者と商品Bの購入者はダブっていたのだが,分析によってそれを見抜けなかったのだ。

図2●BIシステム導入で実現した効果(出所:アビームコンサルティング,2008年4月23日発表)
図2●BIシステム導入で実現した効果(出所:アビームコンサルティング,2008年4月23日発表)

 こうした課題を指摘する一方で大山副編集長は,BIの前段階として,帳票を電子化するだけでも大きなコスト削減効果をあげられると述べる。ユーザー自身が業務システムのデータを取り込んで分析できるようにすることで,様々なシステムから出力していた帳票の数や種類を大幅に減らせるからだ。