船吉 秀人/ウィルコム 技術企画部 次世代企画グループ 課長補佐

 XGPの規格では,FM(first access channel based on MAP)とQS(high quality channel based on carrier sensing)と呼ぶ二つのモードを持っている(図1)。前者は,空いているPRUをできる限り多く使って通信するモード。Web閲覧などパケット・サービスに適したベストエフォート型通信を想定したモードである。後者はPRUを固定的に割り当てるモード。電話など,一定の帯域を確保する場合に利用する。

図1●XGPの通信モード<br>チャネルの混み具合に応じて割り当てるPRUの数を動的に変えるベストエフォート型のFMモードと,固定的にPRUを割り当てるQSモードがある。QSモードの場合はQoS(サービス品質)を確保した通信サービスが提供できる。
図1●XGPの通信モード
チャネルの混み具合に応じて割り当てるPRUの数を動的に変えるベストエフォート型のFMモードと,固定的にPRUを割り当てるQSモードがある。QSモードの場合はQoS(サービス品質)を確保した通信サービスが提供できる。
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 FMモードでは,基地局が端末にPRUを割り当てる際,ANCH(anchor channel)という制御チャネル用に一つのPRUを割り当てる。ANCHには,端末が通信に使えるPRUの番号とそれらを使ってデータを送る際の変調方式などが書かれている。例えば基地局がANCHを送る際,この中に「1から12までのPRUを使って256QAMで変調して送れ」と指示しておけば,次のフレームで端末は1~12のPRUを256QAMで変調してデータを送る。一つのANCHには一つの端末のPRU情報が入っており,複数の端末が通信する場合は,その数に応じたANCHを割り当てる。ANCHはフレームごとに送られる。このため,フレームごとに割り当てる帯域を変更できる。また,全フレームに割り当てずに複数フレームに1回,ANCHを割り当てることもできる。

 一方のQSモードでは端末と基地局がネゴシエーションをした後,固定的にPRUを割り当てる。割り当てられるPRUの数は1個とは限らない。複数個を割り当てることも可能だ。また,FMモードと同様に,複数フレームに1回だけ割り当てることも可能だ。

 ウィルコムのXGPサービスは,現状ではデータ通信サービスだけを提供しているため,FMモードだけで運用している。QSモードの運用時期は未定だ。

船吉 秀人(ふなよし ひでと)
ウィルコム 技術企画部 次世代企画グループ
課長補佐
1997年にDDI東京ポケット電話(現ウィルコム)に入社。PHS基地局/端末やそれにかかわるデバイス開発とメール・センターなどのインフラ設備の企画業務に従事。2004年よりXGPの標準規格化ならびに各種実験計画の担当となり,XGPの規格化を推進した。その後,WILLCOM CORE XGPのシステム・デザインを手掛けた。現在,XGPシステム開発の統括管理を担当し,XGP Forumにおいて「XGP2.0」標準化メンバーも務める。