今回の調査で「技術職/営業職に取らせたい資格」について聞くと、多くの資格が前回より支持率を高めた()。

図●社員に取らせたい資格<br>主要ソリューションプロバイダ101社が回答。上位10資格を掲載した
図●社員に取らせたい資格
主要ソリューションプロバイダ101社が回答。上位10資格を掲載した
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 多くのソリューションプロバイダは今、商談の延期や中止など厳しい環境に直面している。資格取得を通じて社員のソリューション提案力やITスキルを底上げし、現在の状況を乗り切ろうという思いが、調査の結果からは浮かび上がる。

 「顧客との関係をより強固なものにしていかなければ、状況は厳しくなるばかり。技術力の強化に取り組んでいることを顧客に分かりやすい形で示し、信頼を高めていくために、資格の意義はどんどん高まっている」。富士通エフサスの藤原智之サービス人材開発部部長はこう話す。

 以下、それぞれの資格に対する評価を見ていく。

圏外から4資格がランクイン

 営業職に取らせたい資格の1位は、これまでと同じく「情報処理技術者試験 基本情報技術者」だ。前年に比べて支持率は6ポイント増え、2位との差を広げた。

 2位は「情報処理技術者試験 ITパスポート」、3位は「ITコーディネータ」(ITC)である。ITパスポートは、従来の情報処理技術者試験 初級アドミニストレータに代わって、2009年春期に登場した資格だ。情報処理技術者試験制度は2009年春期から、資格体系や内容などが大幅に刷新された。

 4位以下は、前回から大きく変わった。三つの資格がトップ10の圏外から、ランクインしたのである。4位の「中小企業診断士」(前回11位)、8位の「情報処理技術者試験 応用情報技術者」(同12位)、同率8位の「マイクロソフト認定プロフェッショナル」(同12位)だ。

 経営コンサルタント資格の一つである中小企業診断士は、前々回の6位から前回は11位と順位を落としたが、今回は7ランクも上昇し一気に回復した。

 中小企業診断士の資格試験は難易度が高く、合格率は10%前後だ。資格取得の期間やコストがかかることもあり、不況の足音が聞こえ始めた昨秋の前回調査時点では敬遠する傾向が強かった。

 だが、今は違う。「この資格があれば経営に精通していることを示すことができ、顧客からの信頼も得やすくなる」(大手SIerの人事担当者)と、多くのソリューションプロバイダが考えるようになっているのだ。

 8位の情報処理技術者試験 応用情報技術者は、旧制度のソフトウエア開発技術者試験に相当する。試験範囲はIT知識だけでなく経営・法務などの知識にまで及ぶ。顧客のビジネス上の要求を引き出し問題解決策を提示できるスキルの向上に役立つとして、人材育成担当者の注目を集めたとみられる。

 3位のITC、6位の「ITプランニング・セールス」も、前年と同様に上位をキープした。これらも、高いコンサルティング能力を持つ営業担当者に対する顧客のニーズの強さを裏付けている。

 4位以下で順位を落とした資格には、「情報技術者試験 ITストラテジスト」がある。ITストラテジストは、旧試験制度の情報処理技術者試験 システムアナリストと同上級アドミニストレータを統合して新設したもの。経営とITに関する幅広い知識が必要な資格で、応用情報技術者より難易度が高い。

 取得にかかる期間や費用など負担が大きいため、まずは取得しやすい応用情報技術者を重視するソリューションプロバイダが増えていることが、評価が下がった理由だろう。

技術職では初の首位交代

 技術職に取らせたい資格では、情報処理技術者試験が上位10位を独占。なかでも注目すべきは、前回4位だった「情報処理技術者試験 情報セキュリティスペシャリスト」が初めて首位に浮上したことだ。

 支持率は前回から22ポイント増え、71%に達した。71%という支持率は、過去のすべての調査と比べても最高である。

 企業のコンプライアンス意識の高まりもあり、セキュリティシステムの案件でなくても、セキュリティに関する高いスキルが求められるケースが増えている。ソリューションプロバイダの人材育成担当者からすれば、セキュリティの専門資格は商談につながりやすく、高い投資効果を見込めるため、支持が集中したとみられる。

 同率で1位になったのが、2002年の初回調査以来首位の座を占めている「情報処理技術者試験 プロジェクトマネージャ」である。こちらの支持率は前回より8ポイント増えた。

 3位は「情報処理技術者試験 ネットワークスペシャリスト」である。ソリューションの商談では、サーバーやストレージの仮想化環境の構築、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)と既存システムとの連携など、ネットワークのスキルが必要になる場面が増えている。こうした点が、ネットワークワーク関連資格の根強い人気を支えているものとみられる。

 4位以下の資格では、順位に多少の変動があった。データベース構築に必要なスキルを認定する「情報処理技術者試験 データベーススペシャリスト」は前回6位だったのが、3位に上がった。

 また「情報処理技術者試験 応用情報技術者」が前回の7位から6位に、「情報処理技術者試験 ITサービスマネージャ」が10位から6位に、「情報処理技術者試験 システム監査技術者」が11位から10位に順位を上げた。

調査概要

●本調査では、ソリューションプロバイダ164社に「2010年版 いる資格、いらない資格」と題したアンケートを送付。人事部門を中心に101社からメール/FAXで回答を得た(有効回答率61.6%)。調査期間は2009年9月30日から2009年10月21日。2002年から実施しており、今回で8回目となる。

 調査対象の資格は、「公的/非ベンダー系」と「ベンダー系」を合わせて85種類。それぞれの資格について六つの質問に答えてもらった。質問内容は(1)技術職に取得させたい資格、(2)営業職に取得させたい資格、(3)営業上の効果の有無、(4)資格取得者に対する毎月手当の金額、(5)一時支給金額、(6)資格取得・維持費用の補助の有無、である。

 営業効果は「営業効果あり」という回答比率から「営業効果なし」という回答比率を差し引いて算出した。