青少年のコミュニティ・サイトにおける犯罪被害防止策を話し合う安心ネットづくり促進協議会 調査企画委員会は2009年10月7日,「コミュニティサイト検証作業部会」第5回会合を開催し,これまでの議論を整理した骨子案を示した。被害者像と加害者像を想定し,それぞれに対して犯罪被害防止策をまとめた。ただし構成員からの指摘が相次ぎ,まだ議論の余地があることを示した。

 被害者像は,コミュニティ・サイトの利用経験が少なく,危険に対して無防備な青少年を想定している。骨子案ではこうした青少年が被害を受けないための対策として,「携帯電話事業者が,フィルタリングの確実な普及を行うとともに,青少年が初めて携帯電話に触れる機会を活用した啓発活動を一層充実させる」ことを挙げた。骨子案ではフィルタリングとして,モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)の認定を受けたサイトかどうかを基準にしたアクセス制限を前提にしている。認定を受けたサイトは,青少年がアクセスできる。これに対しヤフーは会議で,「EMAの認定を受けたサイトで問題が起きている場合がある。この点に触れずに,フィルタリングが普及すれば犯罪を防止できると回答するのは不十分ではないのか」という意見を述べた。

 同じく骨子案では,「サイト運営者が,サイトの監視を行うとともに,メッセージ機能や検索機能の制限といった機能制限を積極的に行う」という対策を挙げている。これに対し楽天からは,「検索機能を一律または広範囲に制限することは,サービス運営の大きな弊害になり得る。実効的な仕組みをどのように作るか,引き続きの検討が必要ではないか」と指摘した。

 加害者像は,コミュニティ・サイトの検索機能を利用して青少年を探して出会う者,青少年をだまして児童ポルノを作成するものとしている。こうした加害者への対策として,「青少年利用者が検索対象とならないようにする,または同時多送信を行う者など悪質利用が疑われる者に対する適切な監視や規制を行う」「青少年に対してメッセージを送信させないようにする。またはメッセージ内容を監視し,規約違反行為に対して厳格に対処する」「他サイトへの誘導など不健全な行為を防止する,または他サイト運営者との間で違反行為者に関する情報やサイトの適切な運用手法を共有する」ことを挙げた。

 メッセージ内容の監視についてニフティやライブドアから,「事業者が利用者のメッセージを見ることは,法的な問題がないのか。法的な問題を整理しないと取り組むのは難しい」という認識が示された。違反行為者に関する情報共有についても,「違反行為者のIPアドレスを共有することは通信の秘密に違反しないのか。メール・アドレスも,共有すると意図しないところに流れていくのではという不安がある」(ライブドア)と感想を述べた。作業部会では構成員の指摘を踏まえ,2009年10月28日の次回会合で,報告書案を公開する考えである。