J-SOX(日本版SOX法)初年度の大勢が明らかになった。2009年6月30日までに内部統制報告書を提出した企業のうち,56社が「内部統制は有効でなかった」と表明。2社がITを直接の原因とした。

 上場企業の約70%を占める3月期決算をみると,内部統制報告書の提出期限である6月30日までに2672社が報告書を提出し,55社が「重要な欠陥」があると記した。内部統制報告書を提出した企業の約2%に当たる。

 重要な欠陥があった場合「内部統制が有効でない」ことになる()。「不備」を開示した企業も1社ある。このほかJ-SOX対応が期間内に終了しなかったため,「内部統制が有効かを判断できない」とした企業が9社あった。

図●「内部統制が有効か」を判断する考え方
図●「内部統制が有効か」を判断する考え方

 重要な欠陥を開示した企業のなかには,セイコーエプソンやダイキン工業といった大企業が含まれている。セイコーエプソンは,南米にある子会社の取引処理に誤りがあり,決算を訂正。同じ誤りを引き起こさないような内部統制を整備し,それが有効に運用できているかどうかを確認していた。しかし期末日に間に合わなかったことから重要な欠陥として開示した。一方のダイキン工業は工事売り上げの計上といった手続きで,不適切な会計処理があったことを挙げた。

 J-SOXでは期中に重要な欠陥に該当する事項を発見した場合,期末日までに修正して,内部統制が有効な状態で整備・運用できていれば「内部統制は有効である」と見なせる。セイコーエプソン,ダイキン工業とも,発生した問題に対する内部統制の整備・運用が期末日までにできなかったため,重要な欠陥として記すことになった。

システムの稼働遅れで重要な欠陥

 情報システムの問題が直接の原因となって重要な欠陥を開示した企業は,日本アンテナとオフィスサービスのダイオーズである。

 日本アンテナは「全社統合情報システム」の稼働延期が,重要な欠陥につながった。期中の導入を計画していたものの,それを断念し現行システムベースでの内部統制の整備・運用を進めた。しかし,決算・財務報告,販売業務,購買・生産業務の各プロセスの運用状況の記録がとれなかった。

 期中に新システムを稼働する場合は,期末日時点で利用している新システムをベースとした業務プロセスを前提にJ-SOX対応を進めるのが一般的である。日本アンテナは前提を新システムベースから旧システムベースへ変えざるを得なくなり,内部統制の整備・運用が間に合わなかったのではないかとみられる。

 ダイオーズは重要な欠陥の原因に「会計データの一部が消失し,当期の財務諸表作成にあたって消失した会計データの修復作業を行うこととなった」点を挙げている。

 消失した理由については,データの保全手続きにかかわる「運用・保守管理規程」に基づいた業務の遂行が不十分だったため,とした。具体的には復元テストが十分ではなく,バックアップデータが消失していた。これにより期末日までに会計データが修復できなかった。

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