第1回内部統制報告制度ラウンドテーブルの後半では、前半の関係者からの報告を受けて、参加者全員が参加してパネルディスカッションを実施した。

 パネルディスカッションでは費用対効果をはじめとするJ-SOX(日本版SOX法)初年度の課題から、2年目以降の対応効率化の方策、IFRS(国際会計基準)との関係まで幅広い話題を議論した(写真)。

写真●第1回内部統制報告制度ラウンドテーブル
写真●第1回内部統制報告制度ラウンドテーブル
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費用対効果に疑問の声

 J-SOX初年度の課題として、まず話題に上ったのは費用対効果である。J-SOXに対応した企業側からは「費用に見合った効果が得られたかは疑問」との声が上がった。

 特に企業側が費用の増加理由として指摘したのは、社内のコスト負担が大きかった点だ。RCM(リスク・コントロール・マトリックス)や業務フロー図といった文書の作成、証憑の管理業務といった作業のコストがかかった。

 旭化成の吉田稔業務監査室長は「初年度としては費用はそこそこに抑えられた」とする一方で、「企業内でペーパーレスが進んでいるにもかかわらず、監査のために画面を印刷して証憑にするといった行為が発生している。こうしたコストを勘案すると、費用に見合った効果が得られたかは疑問」と振り返った。2年目以降は「キーコントロールの絞り込みなどに取り組み、費用を抑えていきたい」とした。

 文書作成の負担増について、監査側である新日本監査法人の持永勇一常務理事は「簡単には改善できない項目だ。2年目以降の課題になるだろう」とみる。「企業の上層部から文書化を軽減してよいと言わない限り、現場での軽減が難しい」からである。

 文書化以外の要因として、J-SOXに対応した企業を中心に「米国型の企業が前提になっているからではないか」との見解を示した。武田薬品工業コーポレート・オフィサー経理部の高原宏部長は「日本企業は米国企業と比較して職務の定義が明確でない。これについては良い面も悪い面もあるが、日本企業は協調関係で業務をこなす傾向が強い。米国と業務慣行が違う日本企業が対応することを前提に、制度に柔軟性を持たせる必要があるのではないか」と主張する。

 米国に上場しているため、先行して米SOX法(サーベインズ・オクスリー法)に対応して内部統制の整備・運用を進める野村ホールディングスの仲田正史執行役員は、自社の経験を説明した。野村ホールディングスは「ピーク時の監査報酬は30億円。そのうち米SOX法対応費用は3分の1程度だったとみている。これが2年目には3割程度減少、3年目はさらに半減した」(仲田氏)という。

 加えて、内部監査といった社内の作業コストが発生した。「初年度はプロセスを整備せざるを得ない。当社は数年かけて米SOX法対応の業務を見直しているが、費用対効果の見極めは難しい」と仲田氏は話す。