鹿児島県のISP(インターネット・サービス・プロバイダー)であるグッドコミュニケーションズは,「宿泊施設内個別自主放送における観光コンテンツ流通最適化モデルの実証実験」を実施する。ホテルや旅館といった宿泊施設の客室に設置しているテレビをデジタルサイネージ化しようというものである。

「かごしま おもてなしテレビ」デジタル版

図1 システム図
図1 システム図
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 この実験は,デジタル自主放送,番組連動型データ放送および双方向データ通信を使って,客室テレビで宿泊施設周辺の店舗情報などを提供するというものである(図1)。実験期間として2009年11月中旬から2010年3月末日までを予定する。

 この実験は,総務省の「平成20年度ICT地域経済活性化事業 『ユビキタス特区』事業」に採択されている。具体的には,特区事業の一環として推進されている地域情報発信力向上プロジェクトの一つ「宿泊施設内個別自主放送とクラウド型コンテンツ流通プラットホームを活用した観光コンテンツ流通モデルの実証」を,グッドコミュニケーションズが受託して行う実証実験という位置づけである。

 グッドコミュニケーションズは,従来からアナログ自主放送番組「かごしま おもてなしテレビ」を宿泊施設のロビーや客室に放送してきた。今回の実験は,この番組をデジタル自主放送版に発展させたものといえる。

 この実験には,特徴が大きく二つある。「デジタル・テレビ関連技術を上手に活用していること」と,「地域情報の上手な使い方を実践している」ことである。

デジタル・テレビ関連技術を活用

図2 画面例1<番組連動データ放送>
図2 画面例1<番組連動データ放送>
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図3 画面例2<店舗検索データ放送>
図3 画面例2<店舗検索データ放送>
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図4 画面例3<店舗詳細情報(双方向機能)>
図4 画面例3<店舗詳細情報(双方向機能)>
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図5 画面例4<店舗評価情報(双方向機能)>
図5 画面例4<店舗評価情報(双方向機能)>
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 宿泊施設周辺の「お食事」「お土産」「癒し」などの様々な店舗の最新のPR情報が,映像と連動して表示されるように配信される。デジタル・テレビに接続されたインターネット経由で詳細情報の配信や店舗検索など双方向データ通信と各種便利機能がシームレスに使える。放送と通信を融合させたサービスの実現を図る(図2~5)。

 こうしたサービスの展開に向けて,メディアキャストが提供するデータ放送技術を利用している。メディアキャストは,デジタル・データ放送分野に特化したソフトウェア開発などを行っており,コンテンツ技術や運用システムなどデジタル・テレビ放送におけるデータ放送の分野で多くの経験と実績を有する。例えばデータ放送用コンテンツを容易に制作できるシステムなどを扱っている。そのデータ放送関連製品群は,NHKや民放各局,CATV局などで多数採用されている。

 既にBMLによるテレビ向けのデータ放送は,長い運用実績があり,コンテンツ制作という面からもこなれてきている。これを活用することで,テレビが「双方向機能付きのデジタルサイネージ」に化ける。元々デジタル・テレビのデータ放送は,老若男女だれでもがリモコンで簡単に利用できるようになっている。今回の実証実験でも,テレビ用リモコンの簡単な操作で,誰でも簡単に欲しい情報にたどり着ける。

 配信事業者にとってデジタル・テレビを利用するメリットは,テレビ自体に配信を受けて表示するのに必要な機能がすべてパックされている点である。情報の受信や双方向機能,ブラウザなどが,ARIB(電波産業会)の標準仕様に基づいて実装されている。そして,2011年に向けて100%普及への取り組みが懸命に進められている。そのテレビが,サイネージに化けられるのである。一般に「端末」を配布したりブラウザをダウンロードしてもらうのにとても大きな労力を要する。デジタル・テレビ技術の活用で,こうした課題をクリアでき,配信事業者はコンンテンツの掘り起こしに集中できるのである。