顧客の要件定義があいまいなまま開発を進めたために、手戻りが発生して損失を出した―。最大の問題は、システム開発プロジェクトの要となる超上流工程で、システム化本来の目的をSIerと顧客が共有する体制を、築いていなかったことにある。開発の目的を理解せず顧客に言われたままに動くだけでは、 “御用聞き”から抜け出せず、失敗を繰り返すだけだ。

 こうした問題を乗り越えるため、ビジネスのニーズを正確にとらえて問題解決策を提示する工程である「ビジネスアナリシス」(BA)の能力を高めようとする企業が増えてきた。注目すべきは、BAに必要な知識を体系化した「BABOK」(Business Analysis Body of Knowledge)を、BAの役割を果たすための指針としていることだ。BABOKの活用で超上流工程を強化すれば、とかく御用聞きになりがちな SIerの在り方を一新できる。

 不況で多くの企業がIT投資を絞り込むなか、不採算案件の撲滅や潜在的なシステム需要の掘り起こしはSIerにとって生命線である。BAの能力を高め、顧客の潜在的な要求を正確に分析できるようになれば、ニーズを先取りしたソリューションを提案できるようになり、システム需要の喚起にもつながる。

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