Q: 開発から運用に異動したが,モチベーションが保てない。

 顧客の予算削減と元請け会社の戦略により,3年前に開発チームから運用チームへ異動しました。この業界に入って25年になりますが,本格的な運用の仕事は初めてであり,開発SE時代に身につけたスキルだけでは通用しないため,大変苦労しました。

 今では重要な役割に携わり,作業効率化や若手の育成などを手がけていますが,運用という仕事は顧客にとって付加価値を生み出すものではないこともあり,どんなに頑張ってもなかなか報われず,むしろ責任の大きさは開発時代の何十倍もあり,正直言って疲れています。自分自身,モチベーションをどうやって立て直すか色々と思案している状態です。
(ITエンジニア,現在は運用/男性・43歳)

A: 会社の経営全体,顧客のシステム全体を見渡して前向きに考えよ。

 まずあなたはベテランのエンジニアです。そして,運用でも重要な役割を担っていらっしゃいます。ご年齢を考えれば,そろそろ会社の経営にも関心を持ってよいころかと思います。

 実は,経済産業省の調査によると,この不況により2009年1~3月で情報サービス産業全体の売り上げが5.5%マイナス,4~6月も2.7%マイナスとなっている中でも,システム運用は伸びているのです。私の知り合いの経営者は口を揃えて「運用の仕事が欲しい」と言っています。

表●情報サービス業の業務種類別売上高
 2009年1~3月2009年4~6月
業務種類売上高
(百万円)
前年同期比(%)売上高
(百万円)
前年同期比(%)
ソフトウエア開発,プログラム作成2,487,82791.81,536,14796.0
計算事務等情報処理185,707102.6170,791101.8
システム等管理運営受託388,476103.8350,106100.6
データベースサービス42,17799.6350,10696.9
各種調査37,41698.325,012101.3
その他186,789100.9123,62997.2
合計3,328,39194.52,244,13797.3
出典:特定サービス産業動態統計調査

 つまり,あなたが異動したシステム運用は,安定した売上と利益を保証してくれるのでビジネスポートフォリオ上は「金のなる木」となっているのです。ここでの作業効率化や若手育成は,まさに経営上重要な仕事なのです。顧客にとっては価値を生み出さない仕事でも,会社にとっては大きな価値を生み出しているのは間違いないでしょう。そう考えるだけでもわくわくしてきませんか?

 単なる運用作業だけであれば,確かに顧客に積極的な価値を生み出さないかもしれませんが,システム構成全体を見渡して,例えば仮想化によるサーバー集約のように,最先端技術で顧客のコストを大幅に下げる提案を考えてみるのも,あなたの場合にはモチベーション向上に役立つかもしれません。どのような提案をするのかは会社の事情もあるでしょうが,何か積極的な提案を考えて顧客へ貢献できれば,それはもう開発エンジニアに負けないぐらいエンジニアとしてのやりがいが出るでしょう。

 大事なのは,運用に回ったからといって,視野狭窄に陥らず,会社の経営全体,顧客のシステム全体など,広く目を見開いて前向きに考えることなのです。