
第1回 こんな企業がダメなIT活用に陥る
あくまで自社にもたらす効果をベースに思考すべき
米国にも、日本にも、数年おきに流行が生まれることにメリットのある人たちがいます。ファッションの世界で、パリやミラノから流行が世界に広がることと似ています。システム会社が米国の著名企業での成功事例を説明して提案する姿勢は、ファッション業界がプロポーション抜群のモデルの写真を見せて需要を喚起する手法に酷似しているように思えます。
私が尊敬する先輩に、日本を代表する情報化先進企業のCIO(最高情報責任者)だった方がいます。この方のところには、新しい流行や新しい技術を紹介する目的で多くのシステム会社が頻繁に説明に来ていました。彼は技術の説明を聞く前に、「それが当社にどういった効果をもたらす仮説があるのか」と問い、返答に窮した説明者に対しては、それこそ机を叩(たた)いて即座の撤収を求めたといいます。
IT業界の流行は、ファッション業界の流行と同様に、「今年は紫だ」とか「このデザインだ」といったようにユーザーに示されます。
ですから、ダメな“ユーザー企業”のパターン1は、「流行に踊る“ユーザー企業”」です。“ユーザー企業”は常に、「自分は何者なのか」「いま、何を考えねばならないのか」といったことに悩むべきであって、「今年は何が流行なのか」に時間を使う暇はないはずです。もちろん、今回の流行が喫緊(きっきん)の課題を解決する可能性はゼロではありませんが、それは、過去の流行や、むしろ時代遅れの施策が課題解決する可能性がゼロでないことと同じようなものです。
一部のダメな“システム屋”は「流行を知らないことがダメである」と力説するかもしれません。しかし一番ダメなことは、優先課題を先送りしたり、効果の薄いことに多大なエネルギーを使ったりすることではないでしょうか。
ダメな“ユーザー企業”のパターンはあと2つあります。次回以降で詳しく書きます。
1956年東京都武蔵野市生まれ。79年東京工業大学理学部数学科卒業、同年野村コンピュータシステム(現野村総合研究所)入社。流通・金融などのシステム開発プロジェクトに携わる。2001年独立し、フリーランスで活動。2003年スタッフサービス・ホールディングス取締役に就任、CIO(最高情報責任者)を務める。2008年6月に再び独立し、複数のユーザー企業・システム企業の顧問を務める。趣味はサッカーで、休日はコーチとして少年チームを指導する。




