サッポロビールの駒澤正樹ITソリューション部長
サッポロビールの駒澤正樹ITソリューション部長
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 サッポロビールの情報システム部門である「ITソリューション部」は、CIO(最高情報責任者)である駒澤部長の指導の下、ユニークな取り組みをしている。経営陣が作った全社の中期経営計画に基づく戦略マップを参考にして、ITソリューション部が社内の各事業部門や機能部門の戦略マップを独自に作成。それを持参して、各部と中期的な事業や業務やIT(情報技術)の計画を議論しているのだ。

 駒澤部長は、40人近くいるITソリューション部のスタッフにそれぞれ担当部門を持たせて、各部の戦略マップを作らせている。その際、部門ごとのお客様が誰であるかをしっかり理解しておくことが非常に重要だという。「この独自の戦略マップをベースに各部と議論をすると、互いに気づきがあっていい。例えば『ここはコスト削減の対象になりますよね』『お客様のことを考慮するとそこは違う』といった具体的な議論ができるからだ」と駒澤部長はこの取り組みのメリットを説明する。

 駒澤部長がこの取り組みを思いついたきっかけは、2001年ころにERP(統合基幹業務)パッケージの導入を決めたことにある。それまでの基幹システムは、ホストコンピュータで構築してきたので、協力会社を自社に呼んで自力で構築してきた。ところがERPパッケージの導入に伴い、外部への依存度が一気に高まった。「IT部門の人材はこのパラダイムシフトによって、『外部人材をもっと上手に使うプロジェクトマネジメントの力』と『社内各部の要望を事前にしっかり把握しておく力』の2つを高めないと、存在意義が薄れていく」と駒澤部長は直感したのだ。

 そこで駒澤部長は、ITソリューション部が手がけていた既存システムの運用・保守業務の大半をアウトソーシングし始めた。ITスタッフを身軽にし、ユーザー部門に寄り添うことに多くの時間を費やせるようにするためだ。ユーザー部門が何を望んでいるのかを事前にしっかり把握できていないと、新システムを構築する予算や納期が後で大きくぶれてしまう。さらに約5年前から、前述のように、各部の戦略マップを作成する取り組みをスタート。ここ数年は大型ITプロジェクトに注力していたため、この取り組みが弱まっていたが、今期からねじを巻き直しているという。

Profile of CIO
◆経営トップとのコミュニケーションで大事にしていること
・どうしても技術的側面から語りたくなりますが、それでは専門的になりすぎるので、ITがもたらすビジネスへの影響を中心に伝えることを心がけています。ただし、気をつけてはいても、やはり横文字は多くなってしまい苦慮しています

◆ITベンダーへの要望
・オープンシステムでは、システム全体のライフサイクルと、それを構成するハードウエアやソフトウエアのライフサイクルが一致しません。このため、機能が充足しているという意味ではシステムの寿命がまだあるのに、ハードだけ先に駄目になることがあります。すると新しいハードとソフトの相性を再検証するという無駄な作業が発生してしまいます。ITベンダーへの直接的な要望というわけではありませんが、本当に大型コンピュータと比べて長期的に安くなっているのかどうか、悩ましく思っています

◆普段読んでいる新聞・雑誌
・日経情報ストラテジー
・日経コンピュータ

◆最近読んだお薦めの本
・『ビジネスで失敗する人の10の法則』(ドナルド・R・キーオ著、日本経済新聞出版社)
当たり前と思われることが書いてありますが、時々我が身を振り返るために読み返すとよいと思いました。

◆よく見るインターネットサイト
ITpro
ITmediaエグゼクティブ

◆ストレス解消法
・おいしいサッポロビールを飲むことです。読書(特に時代小説)や犬の散歩もストレス解消に役立っています。

■変更履歴
記事公開当初,タイトルと本文の4カ所に「中期計画」という表現がありましたが,正しくは「戦略マップ」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2009/11/10 18:40]