|
|
リーグと球団の経営をあらゆる面で変革 ITがベースボールの収益性を高めるジョン・マクヘイル・ジュニア 米メジャーリーグベースボール取締役副社長総務担当兼CIO
出典:日経情報ストラテジー 2009年7月号
pp.14-15
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります) 私の父はかつてデトロイト・タイガースの選手で、母も同球団のフロントで働いていた。私自身は野球にかかわるつもりはなかったが、なぜかこの世界に入ってしまった。MLBのCIO(最高情報責任者)となったことで、自分がリーグや球団の経営陣としてさらに成長できたと感じている。 2002年3月にMLBのCIOに就任したが、当時に比べると、リーグ全体と各所属球団におけるIT(情報技術)の機能は目覚しい進化を遂げた。 かつてのMLBのITチームは、パソコンが壊れたときに持ち込むためだけにあるような部署だった。しかし、MLBの情報サイト「MLB.com」を通して試合の映像配信サービスを手がけるMLBアドバンストEメディア社と協力してベースボールビジネスを分析するうちに、ITはリーグと各球団の経営をあらゆる面で変革できると認識した。 それから2〜3年のうちに、ハードウエアからソフトウエアに至るまですべてを何のために使うのか意義付けし、ITチームの自発性を育み、リーグEビジネスに貢献する起業家精神を奨励した。2002年にはただのヘルプデスクにすぎなかったITチームが、現在、約2倍の30人から成るプロ集団に変貌し、後述の「プレーヤー・インフォメーション・システム(選手情報データベース)」など次々と斬新なアイデアが出てくるようになった。ITチームは今、「業務」と「アプリケーション」の2グループに分かれる。また、5人のITのプロをリーグ内の各部門に常駐させ、戦略的な目標を持って各業務の効率を改善する役割を持たせた。 各球団の運営を効率化させるツールを開発
ジョン・マクヘイル・ジュニア氏
アメリカとカナダの30球団から成るプロ野球リーグ。1876年に発足したナショナル・リーグに始まり、1903年にアメリカン・リーグをメジャーリーグと認定したことによって、2つのリーグの優勝チームが戦うワールドシリーズが開かれるようになった。2008年の総収入は65億ドルで過去最高。
この数年で最も目立つ成果があったのは、アプリケーション面だ。例えば間もなく始動するプレーヤー・インフォメーション・システムでは、MLBで活躍する選手が最初の契約をした時から現在までの報酬額や試合での実績について、すべての球団の監督やフロントが検索できる。各球団が自分のチームに必要な選手を探し出し、さらに提示する契約金の額を想定可能にする。 各球団がパスワードを使ってアクセスする球団運営のためのポータルサイトの開設も、ITチームの強化がもたらした成果だ。ここには大別すると「財務」「(ユニホームなどの)デザインサービス」「PR」「イベント支援」の4コーナーがあり、これらのうち最も重要なのは「財務」である。この財務コーナーによって、リーグと球団が観客動員数と収入を把握し、負債管理をして、「メジャーリーグ、イコール、ビジネスである」という認識を日々深めることができる。また、球団ロゴの商標権管理やユニホームを変える際に考慮すべきルールについては、「デザインサービス」のコーナーを利用して情報を共有できる。 さらに大きな変化は、試合ルールや規制のデータベース化だ。以前は各球団に『MLBデスクブック』という分厚い冊子が備えられていた。何か改定があると、MLBの法律顧問から改定に相当するページが送られ、球団が古いページを新しいページに入れ替えていた。2006年からこのMLBデスクブックをすべて電子化したので、改定部分を球団に郵送する必要がなくなったばかりでなく、関係者がキーワードで検索することもできるようになった。 現在開発している新たなアプリケーションは「電子カルテシステム」で、各選手の医療データや故障者リスト入りの履歴を球団が把握できるようになる。また、「デジタルEアセットEマネージメント」と呼ぶ資産管理のためのアプリケーションも開発中である。MLBに所属する球団の資産価値は年々上がってきているが、さらに価値を高めるためにもこのソフトが必要となる。 球団のIT化や戦略を支援するのも、我がITチームの大切な役割であり、2年前から毎月各球団のIT担当者を集めて会議を開いている。IT化がMLBよりも進んでいてMLBを手伝ってほしいと思えるような球団もあれば、以前のMLBのようにIT担当者が“修理屋”にとどまっているところもあり、取り組み内容もばらばらだ。そこで我々がITの戦略的な重要性を知らせることによって、ITが球団ビジネスにさらなる価値を加えることができると認識させた。その結果、各球団のIT担当者も仕事に誇りを持てるようになった。
ジョン・マクヘイル・ジュニア氏
米メジャーリーグベースボール(MLB) 取締役副社長総務担当 兼 CIO 米ミシガン州デトロイト出身。法学修士取得。MLBに所属するコロラド・ロッキーズの上級副社長、デトロイト・タイガースのCEO(最高経営責任者)、タンパベイ・デビル・レイズのCOO(最高執行責任者)などを経て、2002年から現職。
連載新着連載目次へ >>
|