Windows 7の発売記念イベントは,Windows Vistaのときと比べると,あらゆる意味で正反対だった。控えめながらも,自信に満ちあふれていた。そして,同OSの持ち味をよく表していた。米Microsoftの広報担当の1人は,「このOSは,製品自体の魅力で売れるから,派手な演出は必要ない」と話していた。

 確かにその言葉どおりだ。Windows 7の発売日の10月22日には,同OSを真っ先に手に入れようとする消費者が小売店の前に行列を作る光景が世界中で見られた(関連記事:ついに発売されたWindows 7)。今回の発売は,各地で興奮や熱狂をもって迎えられた。レビューでの評価も概して良好だ。Apple寄りの姿勢が強い大手メディアの連中ですら,高い評価をしている。だがとりわけ重要なのは,数カ月にわたって同OSの試用に参加してきた人たちからの評判がとてもよいことだ。

 Windows 7のベータ版やリリース候補版の試用に参加したテスターの90%以上が,同OSは“よい”または“非常によい”との評価をし,ほかの人にも薦めたいと答えている。注目に値するのは,Macユーザーと答えている参加者を見てみても,Windows 7を薦めたいとした人が実に80%にのぼることだ。完敗を喫したSnow Leopardは,どこかで悲嘆に暮れていることだろう。

Windows 7“抜き”でも悪くないMicrosoftの業績

 今後を占う大きな試金石となったのが,Microsoftの7~9月期の業績だ。これまで同社は,木曜日の株式市場の取引終了後に決算を発表するのが通例だった。しかし今回は,Windows 7の発売日と重なるのを避けて,翌23日の朝に発表することにした。

 この決定を受けて,市場が落胆するような悲惨な業績ではないのかとの懸念が広がっていた。しかも今回は,10年弱ぶりの大型製品を発売する直前の四半期決算だから,そんな業績が出ても決して不思議ではなかった。

 だが,ふたを開けてみると,アナリストらの悪い予感は外れた。売上高129億2000万ドル,純利益35億7000万ドルという数字は,いずれも前年同期を下回ったものの,アナリスト予想は上回った(関連記事:Microsoftの7~9月期は減収減益,Windows 7先行販売の売上は繰り延べ)。この決算の発表後に同社の株価は大幅上昇した。

 今回の決算で特に目を引くのが,Windows 7に関連する売上高14億7000万ドルを来期に繰り延べている点だ。この数字は,出荷前の段階でのWindows 7の売上高の半分にあたる。つまりWindows 7は,同社の四半期売上高の約25%に匹敵する30億ドルの売り上げを既に上げていることになる。

 筆者は,Windows 7関連のさまざまな記念イベントに参加した直後で,今もニューヨークで興奮覚めやらぬ状態にある。ここでも,Windows 7は大きな存在感を発揮している。ビルの壁全面を使った広告が市内のあちこちにあるし,新年を迎えるカウントダウンで知られるタイムズスクエアにも,Windows 7と東芝のアニメーション広告が輝いている。

 Microsoftにはおめでとうと申し上げたい。すべてが順風満帆に進んだのは,同社としてはずいぶん久しぶりのことだ。