楽しむといっても、仕事と関係ない話題で盛り上がろうというのではない。相手のニーズを探り、互いの認識を擦り合わせるのが目的である。
出身地や家族、趣味といった話題から入り、話しやすい雰囲気を作ってから商談に臨めば、「実は、こういうことなんです」と顧客から本音を引き出しやすくなるという。
普段から坪が持ち歩く弁当が、話しやすい雰囲気作りのきっかけになり、顧客との会話が弾むことも多い。「妻が作ってくれまして…」と切り出し、子供や家族の話などへと話題を広げていく。
顧客との会話を重視する営業担当者は少なくないが、坪の特徴は常に顧客の目線を意識している点だ。「顧客はどうしたいと望んでいるのか」「それに対する当社の対応はどうだったか」などを巧みに聞き出し、商談の反省材料にしている。「打ち解けたなかで出てくる顧客の本音こそ、最も重要な意見。こちらの対応を改善するのに大いに役立つ」と言う。
システム開発が難しい状況に直面しているときこそ、顧客との普段のコミュニケーションが効いてくるというわけだ。
実際、あるプロジェクトでトラブルが発生したとき、AITのエンジニアと顧客の間を坪は奔走して解決にこぎ着けた。「顧客との認識の差が解消し、最終的には手戻りなくトラブルを収束できた」と坪は話す。
このプロジェクトでは、さらに新たな案件を獲得できた。顧客から「今回はITインフラ部分だけを担当してもらったが、次回はさらに大きな仕事を任せたい」という要望が出されたのだ。
「会話を楽しもうと意識したことが、結果的に顧客からの高い評価に結び付いた」と話す坪は、今日も愛妻弁当を携えながら、顧客との時間を楽しもうとしている。
AIT
営業統括本部 産業営業部 主任