写真●浦島 伸一郎氏 セントラル短資FX 執行役員 システム本部 システム事業部長
写真●浦島 伸一郎氏 セントラル短資FX 執行役員 システム本部 システム事業部長
(写真:柳生 貴也)

 私たちの依頼に対し、「もっとよい方法がある」と指摘してくれる。こんなソリューションプロバイダに仕事をお願いしたい。

 企業にはビジネス上の目的がある。これを達成する手段として、情報システムの構築をベンダーに依頼している。ビジネス上の目的を解決するには、さまざまな手段がある。その選択肢を提供してほしい。

 企業のなかにいると、限られた解決手段しか思いつかないことが多いものだ。システム構築を依頼する際に、効率の悪い実装方式を選んでしまうかもしれない。

 こんなときは、言われた通りにシステムを作るのではなく、もっと要件に合う別の方法を教えてくれる存在であってほしいのである。

 しかし、実際は我々が望むようなソリューションプロバイダはあまり多くないのだ。おそらく、ビジネス上の目的を理解してもらえていないのだろう。何のためにシステムを構築するのかを知らずに、代替手段を考えつくわけがない。

 それどころか、業務の話をなるべく避けようとするベンダーもいる。「当社の強みは技術ですから」と言って、業務について深く質問してこない。技術力が高いのはいいことなのだが、それを理由に顧客の業務を理解する努力を放棄しているように思える。

 「当社の製品はこんなに優れている」「当社のネットワーク技術者のレベルは高い」といったことは話せても、「だから御社のこの問題を解決できます」という内容が伝わってこない。ソリューションを語れないのである。

 よく製品や技術のことをソリューションと呼ぶベンダーがいるが、製品や技術だけではソリューションとは言えない。導入後に業務を改善する計画まで提示できて、初めてソリューションといえる。

 ソリューションを提示するためには、顧客企業の業務に興味を持たなければならないはずだ。例えば、普段の我々の業務がどんなもので、これにはどんな意味があるのか、どうなれば収益は改善するのか、といったことである。

 当社のビジネスは、Webサイト上で顧客に外国為替を取引してもらうこと。ベンダーには、社内向けだけではなく、顧客が使うシステムの開発も依頼する。

 せめて当社の顧客と同程度には、外国為替取引に関する知識を持ってもらいたい。外国為替の知識自体は1週間もあれば十分に得ることができるだろう。

 単なる「製品売り」や「技術売り」のベンダーに対しては、こちらも依頼内容や支払う対価を変えざるを得ない。

 より細かく作業を指示しなければならないし、当社の意図がきちんと伝わっているかどうか確かめるため、成果物のレビューも念入りにならざるを得ない。内部コストをかけて、仕事を依頼するリスクを減らしているわけだ。

 当社はシステムがビジネスに直結するので、100人程度の会社にもかかわらず契約社員を含めて20人がシステム要員だ。しかもベンダーをマネジメントできる能力を備えている。

 当社と同じように対応している企業はほかにもいるはずだ。製品売り、技術売りだけのベンダーでは、やっていけないのではないか。収益を確保するためにもソリューションプロバイダへの転身が必要だろう。

 ユーザー企業としても、製品売り、技術売りのベンダーばかりでは心もとない。