情報通信審議会が通信事業者間の接続ルールの見直しについて答申した。今回の答申では,固定通信分野でFTTHサービスの屋内配線の転用ルールが整備された。具体的には,NTT東西がユーザー宅に配線した屋内光ファイバ配線を,他社に契約変更した後も転用できるようにするというもの。KDDIが接続委員会で主張してきた内容が,多く取り入れられた格好だ。

 NTT東西の戸建て向けFTTHサービスでは,今秋中にも屋内配線が第一種指定電気通信設備として指定され,接続条件の整備を義務付けられる見通しだ。集合住宅の屋内配線についても事業者間で転用可能なルールを協議し,その経過の報告が求められる。

 KDDIは競争事業者寄りの審議結果に,「予想以上に踏み込んでくれた」と声を弾ませる。FTTHの競争政策では昨年来,1分岐単位の光回線貸し出しが見送られたり,接続料見直しの値下げ幅が微少にとどまるなど,NTT東西のシェア拡大に競争事業者が歯止めをかける隙がない状況が続いていた。

 KDDIのひかりoneは,フレッツ光よりも通信速度や料金で優位に立つ。そのうえ,今後は制度変更で屋内配線工事をやり直す必要が無くなる。フレッツ光ユーザーに対して,ひかりoneへの乗り換えを勧める営業がしやすくなるはずだ。

 しかし,「攻勢に転じるには課題が残る」と慎重な姿勢を崩さない。転用の実現には,制度面だけでなく配線工法の共通化などNTT東西との協議が必要となる。また,1分岐単位の貸し出しが実現していない現状では,営業可能なエリアは限られる。さらに2011年度の固定事業の黒字化という経営目標も,むやみな拡大路線に走れない“重し”となっているようだ。