シックスシグマによる企業改革や企業価値向上は、短期間には実を結ばない。活動が企業内に定着して初めて、継続的な効果を手に入れられる。活動の定着を図るには、ブラックベルトやマスターブラックベルトなど、活動の牽引役を担える人材を発見・育成し世代交代を続けることが重要だ。

●前回までのあらすじと今回の登場人物●
大手メーカーFN社は、今年度から全社でシックスシグマに取り組んでいる。情報化推進部で推進リーダーとしてブラックベルト(BB)に指名された小谷さんは、自らのプロジェクト課題だけでなく、他のプロジェクトにもかかわるなど、社内のシックスシグマ活動に積極的に携わり始めた。
情報化推進部:村上部長(チャンピオン)、小谷サブマネジャー(ブラックベルト)
シックスシグマ革新部:浅田トレーナー(マスターブラックベルト)
小林社長

 小谷さんの「社員満足度向上:社員用パソコン入手待ち時間の短縮」プロジェクトもいよいよ、最終報告となる『C(定着)フェーズ』のプロジェクトレビューを迎えた。社長や役員が居並ぶ大会議室で、ブラックベルト(BB)が結果を報告する。『A(分析)フェーズ』のプロジェクトレビューではあがってしまった小谷さんも、雪辱を果たすべく万全の準備で臨んでいた。

小谷 『Iフェーズ』で策定した新しい業務プロセスを試行した結果が、このグラフです(図1)。パソコンを手配した50件分のデータを改善前と改善後で比べると、第1メトリクスである作業日数は平均で約3日となり、当初VOC(顧客の声)で求められていたレベルを実現できました。
 第2メトリクスとした作業コストも、パソコン接続の確認といった外部委託作業を内部に取り込むことで、50件分で約40万円のコスト削減が可能なことが分かりました。昨年度に手配したパソコンの数は全社で約500台ありましたので、新プロセスを適用すれば年間400万円のコスト削減が期待できます。期初に予算計上していない、このコスト削減分をどう活用するかは現在、チャンピオンの村上部長と検討中です。以上で、プロジェクトの報告を終わります

図1●社員満足度向上プロジェクトにおける改善策のトライアル結果
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浅田 小谷さん、ご報告ありがとうございました。レビュワーの方からのご質問はございませんか?

村上 今、報告されたコストのやり繰りについて補足しますと、情報化推進部で近々、サーバー増設を計画していますので、ここへの充当を検討しています。当初予算より記憶容量が大きな機種を購入できそうです