シックスシグマでは、各プロジェクトチームがそれぞれのテーマを掲げ解決を図る。それには、チームメンバー全員がテーマの共有はもとより、現状を正しく把握できていることが前提になる。テーマを設定する段階で、業務プロセスをどこまで可視化できるかが、プロジェクト遂行の重要な鍵を握る。

●前回までのあらすじと今回の登場人物●
大手総合電機メーカーのFN社は、今年度から全社でシックスシグマに取り組み、プロジェクト推進部門「シックスシグマ革新部」を設置。情報化推進部からは、小谷さんが部門リーダーのブラックベルト(BB)に指名された。しかし、自分自身のプロジェクトテーマが決まっていなかった。
情報化推進部:村上部長(チャンピオン)、小谷サブマネジャー(ブラックベルト)、門馬部員
シックスシグマ革新部:浅田トレーナー(マスターブラックベルト)
購買部:加藤部員
営業管理部:原田部員

 情報化推進部の村上部長の指示で、社内で簡単なヒアリング調査を実施した結果、小谷さんが手掛ける最初のプロジェクトが決まった。テーマは「社員満足度の向上:社員用パソコンの入手待ち時間の短縮」だ。

 プロジェクトチームのメンバーは、リーダーとなる小谷さんと情報化推進部の門馬さん、パソコン調達の業務プロセスに携わる購買部の加藤さんと営業管理部の原田さんの合計4人。先日、村上部長が同席しキックオフミーティングを開いた後は、メンバーが週1回の討議ミーティングを開いている。

 今日は、その討議ミーティングの日。議題は、「現状把握のためのデータを『M(測定)フェーズ』でどう集めるか」である。

小谷 先日のVOC(顧客の声)ヒアリングでは、「パソコンを発注してから手元に届くまでに時間がかかる。2~3日で欲しい」という要望が数多く出ました。一方で「待たされる割に、使うには再設定が必要だった」という声もありました。
 具体的な問題点や十分なデータが手元にはないので、まずは今、どれくらい時間がかかっているのか、その原因は何かなどを把握する必要があります。今後の『Mフェーズ』で関係する事実とデータを測定し、何が問題かを明確にしたいと思います。それでは、情報化推進部の門馬さんに現況を説明してもらいましょう

門馬 とりあえず手元にあった履歴データから、過去3カ月の受け渡し状況をグラフにしてみました。横軸は、各部門が情報化推進部にパソコンを発注してから、各部門に手渡されるまでの日数です。作業件数は全部で50件ありました

 門馬さんがメンバーに図1のヒストグラムを見せたところ、購買部の加藤さんが最初に発言した。

図1●数値データを“見える化”することから始まる
[画像のクリックで拡大表示]

加藤 このグラフだと、規則的なデコボコがあるように見えるなあ

小谷 ヒストグラムにしてくれたので見やすいけれど、作業日数の平均値やバラツキはどの程度なのかしら?

門馬 そこまでは計算していないんですが“3日以内”には程遠いですね