総務省は「IPv4アドレス在庫枯渇対応に関する広報戦略ワーキンググループ」(「IPv6によるインターネットの利用高度化に関する研究会」の下部組織)の第2回会合を2009年9月16日に開催した。会合ではISP(インターネット・サービス・プロバイダー)やケーブルテレビ(CATV)事業者などが,IPv6対応への取り組みを説明した。

 IPv6対応に積極的なNECビッグローブは,IPv4→IPv6への移行コストを最小限にするには業界が一丸となって早急に端末とサービスをIPv6に切り替えることが重要とした。その上で具体的な移行イメージとして,(1)2011年4月に既存のIPv4グローバル・アドレス(IPv4-g)利用者に対するIPv6接続サービスをオプションで提供し,(2)11年中に新規ユーザーに対するIPv6とIPv4プライベート・アドレス(IPv4-p)のセット提供を開始,(3)2012年から14年にかけてIPv4-gの利用者に対して,IPv6+IPv4-pへの積極的な移行を実施,(4)2015年にはすべての端末でIPv6を利用できるようにし,国内で提供するサービスも原則IPv6のみで提供する──という案を示した。この案に対しWGの委員からは,利用者が取りうる選択肢を複数提示し,利用者自ら合理的な選択ができるような余地が必要ではないか,とする意見が出された。

 ニフティは自社の対応状況について,ハードウエアとOS,ミドルウエア,自社調達のアプリケーションまではほぼIPv6対応が完了しており,今後は社外調達したソフトウエアや課金/会員管理/経理に関わるものの対応を進めるとする方針を説明した。移行スケジュールについては,2011年上期に新規利用者向けにIPv6接続の提供を開始,同時にサービスのIPv6対応も順次進めるとする暫定方針を示した。同社はIPv4アドレスの在庫が枯渇する時期として2011年下期を想定して作業を進めている。移行作業の課題として,(1)IPv6対応の計画を公表しているアクセス網が,今のところNTT東西地域会社のNGN(次世代ネットワーク)に限られる,(2)外部のコンテンツ提供者のIPv6対応への意識が低く,1社だけの取り組みではなかなか対応が進まない,(3)IPv6への移行が進んだ際に,いつまでIPv4をサポートしないといけないのか──といった点を挙げた。この中でも(1)については,ADSL(非対称デジタル加入者線)やISDN,CATV,ダイヤルアップ,移動体通信についてまったくIPv6対応のスケジュールが見えておらず,ISPとして対策を立てづらい,と状況を説明した。

 ソフトバンクテレコムは,主に法人向けサービスのIPv6対応状況について説明した。NTT東西がNGNサービスを開始したタイミングで,IPv6接続サービスについての問い合わせが多くなったものの,2008年の秋以降設備投資を先送りする傾向が鮮明になり,現状では企業からの問い合わせはほとんどないという。ソフトバンクテレコムでは,今後利用者のニーズを見ながら提供サービスごとにIPv6対応を進める方針である。ただしダイヤルアップやADSLを使った接続サービスについては,利用者数の大幅な増加が見込めるわけではないので,IPv4のまま提供を続けることも検討している。公衆無線LANサービスに関しては,提供場所によってネットワーク構成が大きく異なるため,IPv6対応をどう進めるか検討が必要だとした。

 ジュピターテレコム(J:COM)は,CATVインターネットのIPv6対応の現状について報告した。同軸ケーブルを使って通信サービスを提供するための国際規格であるDOCSISは,バージョン3.0でIPv6に対応している。しかし,DOCSIS3.0の導入を積極的に展開しているJ:COMでさえその利用者はまだ10万人程度に過ぎず,多くの利用者は旧規格のDOCSIS2.0でインターネット・サービスを使っているのが現状だという。DOCSIS2.0を使ったCATVインターネットをIPv6に対応させるための拡張規格「DOCSIS2.0+」についても検討が始まってはいる。しかし,日本ほどIPv4アドレスの枯渇に対して危機感を持たない米国メーカーの主導で検討作業が進められていることから,なかなか進捗が見られないという。J:COMでは2010年中にIPv6アドレスを払い出す準備を進め,2012年内にIPv6サービスを提供する予定である。