山下 眞一郎/富士通九州システムズ 基盤ソリューション本部
ネットソリューション部 担当部長

 2009年9月30日,マイクロソフトから無償ウイルス対策ソフト「Microsoft Security Essentials」(セキュリティエッセンシャルズ)日本語版がリリースされました。これについて,ある企業のシステム管理者は『現在,既に家庭用パソコンには有償のウイルス対策ソフトを使用中だが,同時に使用するとよりセキュリティが高まるのだろうか』と相談を受けました。

 Microsoft Security Essentialsは従来,米国・イスラエル・中国・ブラジルを対象にベータ版として限定公開されていたのですが,今回,日本語版も含めて正式に公開されました。ちなみに,ベータ版の公開対象国の選定理由は,その4カ国のウイルスやマルウエアの感染率が高いからだと言われています。

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 対応OSはWindows XP/Vista/7です。マイクロソフトの紹介Webページに「システム要件」が記載されています。ただ,このページには記載されていませんが,64ビット版の「Windows XP Professional x64 Edition」はサポートされていませんので注意が必要です(Windows Vista/7の64ビット版はサポート対象)。

 Microsoft Security Essentialsの特徴として,マイクロソフト自身は「包括的なマルウエア保護」,「簡単に無料でダウンロード可能」,「自動更新」,「操作が簡単」の4点を挙げています。

 「包括的なマルウエア保護」は,ウイルス,マルウエアおよびその他の悪意のあるソフトウエアからの保護を目的としており,“リアルタイム保護”と“スキャンによる検出/削除/検疫(別の場所に移動)”の機能を備えています。

 「簡単に無料でダウンロード可能」に関しては,マイクロソフトへの利用者登録が必要なく,即座に無償ダウンロードが可能です。条件は,導入される先のWindowsが正規ライセンス版であることだけです(インストール中にチェックがかかります)。

写真1●正規品確認画面
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 なお,家庭だけでなく在宅スモール ビジネスでの利用もライセンス的には問題ありません。「マイクロソフト ソフトウェア ライセンス条項」には,直訳で分かりづらいのですが,“インストールおよび使用に関する権利”に関して,『お客様は,本ソフトウェアの任意の数の複製を居住者による使用を目的としてまたは,在宅スモール ビジネスの使用を目的としてデバイスにインストールして使用することができます」と記載されています(英語のオリジナル・ドキュメントでは,You may install and use any number of copies of the software on your devices in your household for use by people who reside there or for use in your home-based small business.)。

 マイクロソフト自身はSecurity Essentialsを“Consumer protection”と位置付けています。企業向けには“Enterprise protection”として,ポリシーを適用して統合的に管理できるセキュリティ対策製品「Microsoft Forefront Client Security」の利用を勧めています。

 「自動更新」では,Microsoft Updateセンター経由で定義ファイルが自動更新されます。手動での更新も可能です。また,ウイルス検出エンジンやウイルス定義ファイルは,企業向けの有償版「Microsoft Forefront」シリーズとほぼ同じものを採用していると言われています。ウイルス定義ファイルの更新状況は,英語情報になりますが「Get the latest definitions」で確認可能です。

 「操作が簡単」は,インストール後にそのままデフォルト状態で使い始められることを指しています。さらにシステムに高い負荷をかけず動作する点もSecurity Essentialsの特徴です。他社のコンシューマ向けセキュリティ対策製品には,ウイルス,マルウエアおよびその他の悪意のあるソフトウエアからの保護に加え,ファイアウォール,スパム対策,フィッシング詐欺対策などの機能を備えたものが多くありますが,Security Essentialsは基本のウイルス,マルウエア,およびその他の悪意のあるソフトウエアからの保護に特化しているためです。

 ちなみに,Security Essentialsはマイクロソフトが提供する「Windows Defender」の機能を包含しています。システムに当初から搭載しているWindows Vista/7では,Security Essentialsをインストールすると自動的にWindows Defenderが無効化されます。ただ,Windows XPにWindows Defenderをダウンロードして組み込んでいる場合は,Security Essentialsをインストールする前にあらかじめアンインストールした方が良いでしょう。