社会問題の解決や社会貢献活動に取り組む非営利組織(NPO)や非政府組織(NGO)が増えている。彼らが今、IT業界が持つスキルを切望している。そんな声にこたえようと、プロジェクトマネジメントやプログラム開発といったIT関連スキルを提供するNPOが活動を始めている。IT業界に身を置く人なら誰でも参加できる。

 NPOやNGOが社会的に果たす役割が大きくなっている。病気の子供に対する教育を支援する、DV(ドメスティック・バイオレンス)に関する情報を発信する、ニートの自立を手助けするなど、その種類や範囲は多様だ。そのNPOやNGOがIT関連スキルを求めている。ITを使った業務効率の向上や情報配信力の強化なしには、人材や資金が限られるなかで十分な活動が展開できないからだ。

同じ時間を使うならプロのスキルを生かすべき

 そうした声に応えるかたちで活動を始めたのが、NPOのサービスグラントである。社会問題の解決や社会貢献活動に取り組むNPOを対象に、Webサイトの構築やパンフレットの制作などを、無償で請け負う。サービスグラントに登録するITエンジニアやデザイナーなどが、仕事やプライベートの時間の合間を縫って、ボランティアで作業をする(図1)。

図1●サービスグラントは7種のスキルを持つ人材がチームを組んでWebサイト構築などに取り組む
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 サービスグラントの嵯峨生馬代表理事は活動の狙いを、「誰でもできる作業を手伝うのではなく、IT業界ならではのプロフェッショナルなスキルを社会に役立てるべきだと考えた。同じ時間を提供するのであれば、専門化としてのスキルを提供するほうが効果が大きはずだ」と説明する。

 2005年に本格的な活動を開始し、現在の登録者数は約250人。うち180人がアクティブな参加者として、そのスキルを生かしている。「活動の中心は20代。今後はマネジメントスキルを持つ30代以上のプロフェッショナルにも参加してほしい」と嵯峨代表は話す。これまでに16団体を支援し、現在は11のプロジェクトを進行させている。NPOなどからの要望は数多いが、それらを審査して絞り込んでいるという。