「NGN/クラウド・コンピューティング時代の企業ネットワーク実態調査」の結果,今後,企業のコスト削減策としてWANを見直すとした企業が3割近くに上ることが分かった。また,サービス開始から1年以上が経過したNTT東西のNGNについては,相変わらず企業の利用が進んでいない実態も明らかになった。
WANサービス,特に広域イーサネットでは来年以降,利用率の分布が変わっていく可能性がある。2009年7月に,コスト・セーブが可能になる新たなサービスが登場したからだ。一つはKDDIの「KDDI Wide Area Virtual Switch」(WVS)。もう一つはNTTコムの「Group-Ether」である。
新サービスが低コスト化を加速
今回の調査では,企業のコスト削減策について尋ねた。その中で,今後のコスト削減策としてWANを見直すとした企業は26.9%。こうした状況を考えると,新サービスに乗り換える企業が次々に出てくることが考えられる。
WVSはデータ・センターと併用すると安価に高速な通信を実現できる,バースト対応型のサービスで,次世代の広域イーサネット・サービスとも言える。例えばアクセス回線の物理インタフェース帯域が100Mビット/秒の場合,拠点間用に10Mビット/秒の速度品目を契約しても,データ・センターとの間では最大100Mビット/秒で通信できる。KDDIあるいはKDDIの提携先データ・センターを利用することが前提になるが,コスト・メリットを考えると,多くのユーザーがWVSを採用する可能性がある。
同様に,NTTコムのe-VLANやArcstar IP-VPNも伸びる可能性がある。同社はこれらのサービス向けに「バーストイーサアクセス」というアクセス・メニューを設けたからだ。契約帯域を超える通信についてはベストエフォートになるものの,ユーザーが選んだアプリケーションでは最大で物理インタフェース帯域まで利用できる。
ユーザーは既にバーストに注目
実際,これらのバースト対応サービスに対するユーザーの期待度が高いことが分かる。例えばバースト対応サービスを基幹系のネットワークで利用することについて尋ねたところ,「よく知らないので判断できない」と答えた企業が57.9%に上ったものの,30.4%は「ぜひ使いたい」,「使ってみたい」と回答した。アンケート実施時期がサービス開始とほぼ同時期で,まだ広く認知されていないという事情を考えると,利用意向の数字はかなり高い。
さらに台風の目になりそうなのがGroup-Etherである。Bフレッツをアクセス回線として利用できる広域イーサネット・サービスで,いわばエントリーVPNの広域イーサネット版。従来の広域イーサネットに比べて料金が格段に安くなる。コスト削減圧力が強まっている今,IP-VPNでGroup-VPNが台頭してきたのと同様に,Group-Etherがにわかに頭角を現してくるかもしれない。
一方で,相変わらず低調なのがNTT東西のNGNである。インターネット接続用,フレッツVPN・ゲート/ワイドを合わせて,「利用している」と回答した企業は1167社中わずかに59社(5.1%)。今後の利用意向も「移行計画がある」,「検討中」を合わせて78社(7.1%)にとどまった(図1)。
採用しない理由は依然として,「NGNに関する情報が少ない」,「従来サービスとの違いが分からない」,「実績が少ない」が上位に並ぶ。NTT東西は,帯域制御型データ通信サービスや大企業向けIP電話,回線認証サービスなど,NGNを使ったサービス提供の準備を進めているものの,テンポは決して速くない。“実用”のサービスになるには,まだ時間がかかりそうだ。