写真1●米ベタープレイスのように、電気自動車のバッテリーを脱着式にする構想を持つ企業も現れている2009年4月から5月にかけて実施したバッテリー交換システム実証実験の様子
写真1●米ベタープレイスのように、電気自動車のバッテリーを脱着式にする構想を持つ企業も現れている2009年4月から5月にかけて実施したバッテリー交換システム実証実験の様子
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 電気利用者に近いインフラ下流でもう一つ大きなインパクトとして見逃せないのは電気自動車(EV)の存在である。EVはそれ自身がエコなだけでなく、スマートグリッドにとって重要な“家庭用蓄電池”でもある。太陽光発電で生み出した電気をためるのに格好の存在だからだ。新政権はEVをスマートグリッドを整備するための重要なピースと明確に位置付けるべきだろう。

EVが2900万個の蓄電池になる

 環境省は09年8月に発表した「温室効果ガス2050年80%削減のためのビジョン」で、乗用車の半分以上がEVになるとのシナリオを明らかにした。現在の国内保有乗用車数が約5800万台であるから、単純計算で2900万個もの蓄電池がスマートグリッドに接続されることになる。これらを有効活用しない手はない。EVという新しい市場が見えれば、スマートグリッドに対する投資のハードルは下がる。

 すでにEVに特化したインフラの構築が始まっている。青森県や大阪府など自治体、新日本石油などのエネルギ ー会社、NEC、NTTデータ、日本ユニシスなどの大手IT企業が、電気自動車が利用する充電スタンドを結ぶ管理システムを構築中だ。経済産業省の委託事業として実施し、2009年度内には稼働させるという。

 EVの蓄電池を交換式にする動きもある。米ベタープレイスが充電に時間がかかるEVの弱点を補う手法として考案し、日産自動車などと共同で技術開発を進める(写真1)。「古くなった蓄電池を家庭用などに流用できる」(三菱重工業の福泉次長)。