「効率的な電力網(スマートグリッド)の技術開発・普及を促進する」。国民生活に根ざした温暖化対策の一つが、マニフェストに明記された。民主党は「二酸化炭素(CO2)排出量を2020年までに1990年比で25%削減する」という非常に高い目標を掲げる。達成するには、国内のエネルギー消費構造の抜本的な見直しが必要になる。

 スマートグリッドはその根幹となる仕組みの一つ。発電した電力を家庭や企業に送配電するまでのインフラを、ITを使って効率化するものだ(図1)。

図1●一口にスマートグリッドといってもその内容は幅広い
図1●一口にスマートグリッドといってもその内容は幅広い
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 今後、太陽光発電システムなどが普及し家庭での発電量が増加すると、現在のように電力会社から家庭へという一方向の電力供給ではなくなる。複雑化する電力インフラを制御し電力を有効利用するために、情報システムは欠かせない。今後は電気自動車もスマートグリッドのなかに取り込まねばならない(図2)。
図2●電気自動車向け充電スタンドをスマートグリッドの一部として構築する構想が動き始めている
図2●電気自動車向け充電スタンドをスマートグリッドの一部として構築する構想が動き始めている
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 規制緩和も必要になる。「垂直統合型になっている電力業界の構造は、太陽光発電が盛んになれば見直さざるを得なくなるのではないか」(三菱重工業 エネルギー・環境事業統括戦略室の福泉靖史次長)、「地域ごとに分かれている電力会社間の競争が必要だ」(日本総合研究所 創発戦略センターの宮内洋宜研究員)との指摘もある。

 単純に設備投資を重ねてスマートグリッドを導入すると、社会全体に重いコスト負担がのしかかる。それを軽減するには法規制を見直し、市場を活性化させる必要がある。経済性とCO2削減が両立するスマートグリッドを目指すべきだ。