プロジェクトには多種多様な「会議」があり,そこには情報の収集,議論,調整,意思の伝達など,プロジェクト運営にとって極めて大切な機能が存在する。この「会議」が機能不全に陥ると危険だ。プロジェクトマネジャやPMOは,会議をリードする司令塔とならねばならない。

金子 啓
マネジメントソリューションズ


 「会議がうまく進まない」――。誰もが一度は経験したことがあるのではないでしょうか。なぜうまくいかないか,様々な要因が考えられると思いますが,その原因を1つひとつ一緒に考えてみましょう。そこから,会議をうまく進めるコツが見えてくるはずです。

会議に来てほしいキーパーソンの出席率が悪い

 会議がうまく進まない原因の1つとして,「キーパーソンの出席率が悪い」という問題があるでしょう。文字通り「鍵を握る人」ですから,毎回出席してもらわないと,何かと差し障りが生じます。

 例えば,個々のメンバーがそれぞれ考えを述べるだけで,キーパーソンが集約して適切な仕様に落とし込めなくなる(仕様を最終決定できなくなる)ことがあります。こうなるとプロジェクトは遅れ始めます。また,ユーザー側と開発側の両者が出席する全体会議において,お互いのキーパーソンが欠席してしまうと情報共有の場がなくなり,システム化した時に認識違いが顕在化するリスクが生じます。

 もちろん,キーパーソンはたいてい多忙なので,会議の日時にほかの用事をブッキングしてしまうことがあります。キーパーソンのスケジュールを押さえても,キーパーソン本人が作業の優先度を決めるので,なかなかプロジェクトの都合を通せないことがあります。

 加えて重要なのは,キーパーソンが「会議に出なくてもいいのではないか」と思っているケースが多いことです。2つのパターンがあります。まず,キーパーソンに無関係な議題が多く,「だらだらとした会議で時間の無駄」と思われているケース。もう1つは,そもそもキーパーソンが会議の必要性を理解していないケースです。

「キーパーソンは会議を欠席してはならない」という自覚

 対策としては,まずたくさんある会議体をPMOが整理し,会議の目的,参加者を決めるべきです。すべての会議の参加者,目的を現場メンバーからヒアリングし,その妥当性を吟味する必要があります。それにより,キーパーソンが会議に費やす時間とコストの無駄をなくし,浮いた時間をもっと優先度の高い作業に振り向けられるようにする必要があります。

 次に,キーパーソンには「自分は絶対に会議を欠席してはならない」という点をしっかり自覚してもらわなければなりません。しかし,皆さんもご承知の通り,「次の会議は絶対に出てくださいね」と念を押す程度で理解してもらえるわけではありません。

 そこで,キーパーソンAさんの席まで何度も足を運び,「Aさんがいないところで,こんな要件が出て,決定したと聞きましたが,Aさんの認識と合っていますか?」「1つだけでなく,いくつかの重要な要件でこういう状況になっています。今,方向を修正しないと,プロジェクトが危ないです。大変なことになります。だからAさん,絶対に会議に出てほしい!!」などと口説き落としてみてはどうでしょう。会議の時間になったらAさんの席まで迎えに行き,「会議に行きますよ!」と連れていくのもいいでしょう。