NTTグループは,企業向けの上位サービスを推進するうえで,「SaaS over NGN」と呼ぶ共通ビジョンを公表している。自社でアプリケーションを開発するだけでなく,外部のパートナ企業とコラボレーションを進め,企業向けSaaSの幅を広げようという方針だ。

 このビジョンの下で,「SaaS基盤」と呼ぶPaaSに相当するソリューションや,HaaSに相当する仮想化技術を利用したホスティング・サービスなど,SaaS事業者やSI(system integration)事業者向けのサービス・ラインアップを拡充している(表1)。

表1●NTTグループの代表的なXaaS型サービス
NTTが「SaaS over NGN」関連サービスとして紹介している中から主なサービスを取り上げた。多くがソリューション型で提供しており,利用に応じた柔軟な課金や,Web上だけで申込みから利用開始まで進めるものはまだ少ない。
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表1●NTTグループの代表的なXaaS型サービス<br>NTTが「SaaS over NGN」関連サービスとして紹介している中から主なサービスを取り上げた。多くがソリューション型で提供しており,利用に応じた柔軟な課金や,Web上だけで申込みから利用開始まで進めるものはまだ少ない。

プラットフォームに共通仕様の機能を導入

 個別に見ると,SaaS事業者向けの基盤サービスとしては,NTTコムの「BizCITY for SaaS Provider」と,NTTデータの「VANADIS SaaS Platform」がある。この二つの基盤は,SaaS over NGN構想の中核となる。

 9月以降,両社の基盤には,NTTの研究所と3社で共同開発した「SaaS基盤共通機能群」を順次導入していく(図1)。

図1●NTTコムとNTTデータは共通機能群をSaaS基盤に導入<br>NTTコムはBizCITY上のSaaSサービスを拡充。NTTデータは企業向けのSaaSソリューションとして基盤を活用。
図1●NTTコムとNTTデータは共通機能群をSaaS基盤に導入
NTTコムはBizCITY上のSaaSサービスを拡充。NTTデータは企業向けのSaaSソリューションとして基盤を活用。
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 共通機能群を導入することで,認証や決済など,SaaSをサポートする機能の仕様が両者間で統一できる。将来は,基盤の間でサービスを連携させる計画もある。現状では,基盤ごとにそれぞれの異なるSaaSが並んでいるが,片方の基盤で認証されたユーザーIDで,もう一方の基盤上のSaaSを使ったり,サービス利用料の課金口座を統合するといった連携が実現する可能性がある。ただ,連携はしても,ビジネスモデルとしては両社がそれぞれの顧客に合わせた別々の展開を考えている。

 NTTコムのBizCITYは,SaaS事業者との協業モデルで,VPNサービスの利用者拡大を目指している。パートナのSaaS事業者は,BizCITY上に自社アプリケーションをホスティングしたり,自社で運用するアプリケーション・サーバーを専用回線でBizCITYにつなぎ込み,VPNとの接続機能や認証基盤と連携させた自社サービスを提供する。

 VPNとSaaSを組み合わせることで,「インターネット経由の利用や,セキュリティ強度に対して慎重な企業ユーザーを取り込む」(NTTコミュニケーションズの原隆一・ビジネスネットワークサービス事業部長)というモデルだ。