ネットワーク

クラウドに踏み込むNTTグループ

日経コミュニケーション

[技術開発]電子政府レベルを想定した高信頼性をクラウドに

 クラウドの実現に向けて,NTTの研究開発部門では電子政府をはじめとする“公共サービスなど社会基盤に適用できるレベルの信頼性”を目標に掲げ,クラウド基盤技術の開発を進めている。

 後藤厚宏・NTT情報流通プラットフォーム研究所・所長は,「NTT版クラウドは,ネットワークとコンピューティングの両方の進化をまとめていくチャレンジと言える。通信サービスは99.999%の可用性を達成しているが,サーバーの管理・制御も同等のセキュリティ・レベルや運用品質を実現する」と,開発の理念を語る。

 クラウド・サービスの提供で必要となるのは,サーバーやストレージ,アプリケーションなどのコンピュータ資源をリソース・プールとして仮想化し,管理・制御する技術だ。NTTでは,キャリア・クラスの信頼性をもたらす管理・制御技術を,CBoC(Common IT Bases over Cloud Computing,シーボック)というプロジェクトの下で,開発している。

高信頼の上位サービスを支える管理技術

 CBoCは,可用性やスケーラビリティ,サービス連携機能などを,上位レイヤー・サービスの基盤として提供する複数のミドルウエア群で構成する(図1)。

図1●NTTが開発中のクラウド・コンピューティング技術「CBoC」
ICTリソースの管理・制御用のミドルウエア群を開発。スケーラビリティ,可用性の向上,システム・コストの削減など,クラウド・コンピューティングに求められる「非機能要件」を実現し,XaaSに限らず様々なサービス基盤に応用していく計画である。
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 具体的には,サーバーを無停止で保守するための「アプリケーションサーバー層仮想化技術」や,処理負荷を複数のリソースに分散する「リソース負荷分散制御技術」,仮想サーバー間で処理プロセスを引き継ぎ,上位サービスを継続する「サーバー間分散調停技術」といったテーマごとにミドルウエアを開発している。

 SaaS基盤にCBoCの構成ミドルウエアを導入すると,ユーザーの要求に応じてSaaS用の仮想化システムを短時間で組み立てるといった運用管理が可能になる。SaaS用にいくつかのパターンの仮想サーバー環境をテンプレートとして用意しておき,ユーザーが求める処理性能に応じて,ストレージやアプリケーション,サーバー,負荷分散装置などのリソースから必要な性能を確保,適切なテンプレートに割り当てるといった制御の自動化ができる。

 CBoCの適用領域はSaaS基盤だけに限らない。「電子行政サービスや医療システムなどの公共サービスや,Web検索サービスといった大規模データ処理サービスなどに応用することも念頭において性能や品質基準を設定している」(後藤所長)という。NTT版クラウドが目指す社会基盤のクラウド化に向け,幅広く活用していく想定である。

公共レベルではクラウド間連携が不可欠

 電子行政サービスなどの公共系アプリケーションをクラウド・コンピューティングを使って提供していくうえでは,「複数の事業者が別々に持つクラウド間のサービス連携についても,検討が必要」(後藤所長)という。

 単一のクラウド事業者の設備を使って公共サービスを提供すると,処理負荷の分散や有事のバックアップなどに制約が生じる。複数のクラウド事業者が協調してリソースを融通できれば,サービスの信頼性,可用性をさらに高められるというわけだ。

 クラウド間の連携を実現するためにNTTは,産官学で構成する「グローバルクラウド基盤連携技術フォーラム」(GICTフォーラム)を通じて,業界標準アーキテクチャの策定に力を入れる。クラウド間のサービスレベルを合わせるために交換すべき情報や,そのやり取りの方法などをフォーラム活動の中で提言していく。

(滝沢 泰盛=日経コミュニケーション)  [2009/10/15]
出典:日経コミュニケーション 2009年9月1日号  pp.40-42
(記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

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