ネットワークを生かしたクラウドで社会基盤サービスを狙うNTT
上位サービス強化はネットワーク拡販の手段
アマゾンやグーグルなど先行するグループがクラウド・サービスで狙うのは,本業であるEコマースや検索サービスといったプラットフォームを,他のサービスにも有効利用して収益機会を広げること。大規模なサーバー群を運用するための独自ノウハウを持っていたことが,エンドユーザーにも希望に応じてリソースを振り分けるクラウド・サービスの開発につながった。
これとは対照的に,通信事業者であるNTTグループは自身の持つネットワーク・インフラの利用を活性化するために,クラウド・サービスを拡充するのが基本姿勢である。
NTTグループ全体のSaaS,クラウド事業の推進で指揮を執る宇治則孝副社長は,「グーグル,アマゾンも一つのクラウドの形だが,我々はより安心・安全が求められる社会基盤に近い領域で,強みを発揮していく」と戦略を語る。
NTTグループの現状は,企業向けのSaaS基盤を強化する段階にあるが,そこで高信頼,高セキュリティの基盤運用のノウハウを蓄積する。その先に大企業向けの基幹システムや電子政府,金融サービスといった,まだクラウドの導入が始まっていない公共性の高い領域に進出することを目指す。VPN(仮想閉域網)やNGN(次世代ネットワーク),LTE網といったネットワークと組み合わせることで,通信事業者ならではの信頼性やセキュリティの向上を図る。一方,SaaS部分の拡充は,外部パートナとの連携で進めていく(図2)。
クラウド上に行政サービスや金融サービスが充実してくれば,結果的に,ブロードバンド回線をはじめとしたネットワークも今まで以上に普及するという成長戦略を描いている。
NTT版クラウドはネットワーク連携実現が鍵
7月にNTTコムとNTTデータが発表したSaaSプラットフォーム機能の共通化は,その取り組みの第一歩。宇治副社長は「手を付けていくことは,まだたくさんある」と言う。
その一つは,NGNとSaaS基盤の間の連携だ。NTTはグループ全体の旗印として,「SaaS over NGN」というキャッチフレーズを掲げているが,回線認証や帯域確保といったNGNの機能にSaaS基盤を連携させたサービスはまだ実現できていない。NTT東西がNGNの機能を拡張し,上位サービスと連携するインタフェースを用意することが必要だ。
公共サービス・レベルのクラウド・サービスを実現するうえでも,NTTグループだけでは解決できない課題がある。総務省は,電子政府サービスについて「安定的に運用するには,異なるクラウド間の連携など複数の事業者を使い分ける工夫が必要」と判断している。NTTグループには,クラウド同士を連携させる仕組み作りを率先して進めることが求められている。
次回以降では,信頼性,安全性を重視し,既存のクラウドとは異なる領域への展開を目指すNTT版クラウドについて,現段階で見えているサービスや技術開発の方針,営業戦略などを見ていく。
(記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)







