岸本 善一
この連載を始めてから8カ月ほど経つが,短い連載の間にも大きな変化があった。昨年9月に始まった金融危機がITやデータセンター業界の景気を急激に冷え込ませた。MicrosoftやGoogleは,それぞれ巨大データセンターを数カ所同時に建設すると発表して話題を集めたが,景気の悪化を受け,建設の一時中止に追い込まれた。
データセンターのアウトソーシングをビジネスにしているハウジング(コロケーション)会社やホスティング会社の株価は軒並み下落した。大手のデータセンター事業会社の2008年の業績を表1に示した。
企業名 | 2008年総売り上げ | 純利益 |
---|---|---|
Savvis | 857億円 | -9億円 |
Equinix | 704億円 | 131億円 |
Digital Realty Trust | 527億円 | 68億円 |
Internap | 253億円 | -104億円 |
Trremark | 187億円 | -42億円 |
DuPont Fabrios | 173億円 | 19億円 |
Switch and Data | 171億円 | -7億円 |
また大手データセンター事業会社の2007年以降の株価の動きを図1に示す。
一般的に,株価は2008年6月ころから下降しはじめ,2009年3月末あたりから復調する様子が見られる。不景気なので,自前で運営するよりもデータセンター事業会社にアウトソースする企業が増加し,こうした動きがデータセンター事業会社の業績を後押ししているようだ。
また,後述するように,「温室効果ガスの排出規制と排出枠の取引」を規定した政策が実施されれば,電力費が高騰することが予想され,データセンターをアウトソースした方がトータルコストを削減できるという見方が広がりつつある。このこともデータセンター事業者には追い風になっており,新たなセンターの建設や設備の拡張を行っているところもある(これは実際の聞き取り調査によって確認したことである)。
米国では,不景気とはいえ,コンピューティング需要の減少は全く見られず,データセンターへの需要と供給のバランスは崩れたままである。景気に回復の兆候が見えてくると言われる2009年後半以降は,コロケーションの価格が7-10%も上昇するとの見方もある。