IFRS(国際会計基準)に対応する際に,最も大きな影響を受ける情報システムは会計システムである。システムの作り方としては今後,ERP(統合基幹業務システム)パッケージや会計パッケージ,あるいはSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)を利用する企業が増える一方,いわゆるスクラッチ開発(手作り)は減少しそうだ。2009年7月にIT専門家に対して実施した「IFRSに関する調査」から,こうした動向が予想できる。

ASP/SaaSが急増

 まず勤務先の会計システムについて,「現在の構築方法」と「今度再構築する場合の方法」を尋ねた。すると,「全く分からない」との回答が「現在」で42%,「今後」で50%となった(図1)。

図1●勤務先の会計システムの構築方法(N=3863)
図1●勤務先の会計システムの構築方法(N=3863)

 そこで「全く分からない」と無回答を除外して再集計した。現在と今後で,構築方法がどのように変化するかを見やすくするためである。その結果を図2に示す。

図2●勤務先の会計システムの構築方法(方法についての具体的回答者ベース)
図2●勤務先の会計システムの構築方法(方法についての具体的回答者ベース)

 この集計結果(「現在」はN=2183,「今度再構築」はN=1866)によると,「ERPや会計パッケージをベースに構築」は現在の70%から,今後は72%へと微増。「ASP/SaaSを利用」は3%から10%と,少数ではあるが大幅に伸びる。逆に「スクラッチ開発」は,27%から18%へと大幅に減少する。

 スクラッチからパッケージへ,というのは企業の基幹システムにおける大きなトレンドである。会計システムもその例外でなく,さらにASP/SaaSへのシフトも無視できない流れであることが読み取れる。

 ASP/SaaSを今後利用したいとする回答者の属性をみると,採用率の伸びが目立つのは従業員規模300人未満の中小企業である。全体では3%から7%へと4ポイント増,図2に示した「構築方法の具体的な回答者」では5%から13%へと8ポイント増加する。

 ITベンダーの多くは,ASP/SaaSを中堅・中小市場向けととらえている。今回の調査結果も,会計システムをASP/SaaSとして利用する動きは中小企業から進む見込みであることを示している。

調査概要

 「IFRS(国際会計基準)に関する調査」は,ITpro Researchモニターを対象にWeb調査で実施した。ITpro Researchモニターは,ITpro登録会員で日経BPコンサルティングのアンケート調査モニター登録者であり,「IT分野に関心をもち,アンケート調査への協力意向の高いIT関係者」といえる。

 調査期間は2009年7月16~23日。総回収数4002件のうち,ビジネスパーソンからの回答3863件を有効回収数とした。調査は日経BP社コンピュータ・ネットワーク局プロジェクト推進部と日経BPコンサルティングが企画を,日経BPコンサルティングが実査・集計・報告を担当した。同調査に関する報告書は,日経BPコンサルティングが販売中