「ネットワーク最前線」では,IPv4アドレス枯渇とIPv6移行をテーマとしたネットワーク関連の最新技術を展示する。また,最先端のAR(Augmented Reality:拡張現実)システムを,実際に触って試せるデモも用意する。


 ITpro EXPO恒例の「ネットワーク最前線」。今回は大きく二つのテーマを掲げている。一つが「IPv4アドレス枯渇/IPv6移行」,もう一つが「AR(Augmented Reality:拡張現実)」だ。

IPv4アドレス枯渇/IPv6移行の最新対策

 IPv4アドレスは早ければ2011年にも割り当て可能なアドレス・ブロックがなくなってしまうと言われている。そこでネットワーク最前線のIPv4アドレス枯渇/IPv6移行ホットステージでは,IPv4アドレスの枯渇に備えた最新の技術を紹介する。ポイントはIPv4ネットワークとIPv6ネットワークが混在する環境での対策だ。

 A10ネットワークスがIPv4アドレス枯渇対策として実演するのは,IPv4アドレスの延命策「ラージ・スケールNAT」(Large Scale Network Address Translation:LSN)と,IPv4/IPv6環境の共存策「Dual-Stack lite」のデモである。今回のデモには同社が開発した負荷分散装置ベースのLSN装置「AX 5200」を使う。

 LSNとは,IPv4グローバル・アドレスを複数のユーザーで共有する手法のこと。デモでは,AX 5200が割り当てたIPv4プライベート・アドレスを使いながら,パソコンからインターネット上のWebサーバーに問題なくアクセスできる様子を実演する。

 もう一つのDual-Stack liteは,インターネットへのアクセスにIPv6ネットワークしか使えない状況で,IPv4端末を使い続けるための手法である。今回のデモでは,IPv4パケットをIPv6のL2TP(Layer 2 Tunneling Protocol)を使ってカプセル化するIPv4over L2TP(IPv6)通信の様子を,パケットをキャプチャしながら見せるような内容を予定している。

 同社はこのほか,AX 5200の負荷分散機能を使って,IPv4/IPv6混在環境のデモも行う予定だ。AX 5200を介することで,IPv4パソコンからIPv6対応のWebサイトにアクセスしたり,IPv6パソコンからIPv4対応Webサイトにアクセスしたりすることが可能になる(図1)。なお図1の構成はデモのためAX 5200を会場内のクライアント側に設置しているが,実際のネットワークではデータセンターのネットワークの入口などに設置して,そこにWebサーバーをつなぐ構成になる。

図1●A10ネットワークスのAX 5200によるIPv4/IPv6 混在ネットワークのデモ
図1●A10ネットワークスのAX 5200によるIPv4/IPv6 混在ネットワークのデモ
AX 5200を介することで,IPv4パソコンからIPv6 対応のWebサイトにアクセスしたり,IPv6 パソコンからIPv4対応Webサイトにアクセスしたりできる。実際のネットワークでは,AX 5200はデータセンターの入口など,Webサーバーの手前に設置することになる。
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IPv4端末をIPv6ネットに接続

写真1●ディーリンクジャパンが展示するIPv4-IPv6トランスレータ「DFL-1600/IT」
写真1●ディーリンクジャパンが展示するIPv4-IPv6トランスレータ「DFL-1600/IT」
IPv6 化されたネットワークでIPv4 機器を使えるようにするデモを実施する予定。
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 ディーリンクジャパンが展示するのは,IPv4とIPv6のプロトコルを相互に変換するIPv4-IPv6トランスレータ「DFL-1600/IT」(写真1)である。今回のデモでは,IPv6ネットワークとIPv4ネットワークの境界にDFL-1600/ITを設置し,IPv4でしか通信できない機器をIPv6のネットワークで使えるようにする。例えばIPv4ネットワーク・カメラで撮影した映像をIPv6ネットワークでストリーム配信するといったデモを予定している。

 IPv4クライアントから通信先のIPv6機器へのDNS(Domain Name System)問い合わせがあった際,DFL-1600/ITは変換用のアドレスを生成し,この変換用アドレスをクライアントに返答する。変換用アドレスとクライアント本来のIPv4アドレスとの対応付けを管理することで,装置を通過するパケットのヘッダー内にあるIPv4アドレスをIPv6アドレスへ変換する仕組みだ。

 これによってIPv4クライアントがIPv6ネットワークを利用できるようになる。会場ではパケット・キャプチャなどのツールを使って,実際のパケットのやり取りを確認してもらう予定だ。なお,DFL-1600/ITのトランスレータ・ソフトは横河電機が開発した。

v4/v6デュアルでスイッチ冗長化

 シスコシステムズは,IPv4とIPv6の両方のプロトコルが通るデュアルスタック環境において,冗長構成にした2台のレイヤー3スイッチ(Catalyst 6504-E)の切り替えデモを行う予定だ。1台のスイッチに障害が発生した場合でも,IP電話による通話を続けられることを実演する(図2)。

図2●シスコシステムズのVSSによるIPv4/IPv6デュアルスタックの冗長化デモ
図2●シスコシステムズのVSSによるIPv4/IPv6デュアルスタックの冗長化デモ
IPv4/IPv6デュアルスタックを構築し,IP 電話とパソコンによるIPv6 通信とVSSによるスイッチ切り替えのデモを実施する予定。
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 スイッチの冗長化にはVSS(Virtual Switching System)用モジュールを用いる。VSSは2台のスイッチを仮想的な1台のスイッチとして扱えるようにする技術である。IPv4/IPv6デュアルスタックにおけるVSSによるスイッチ切り替えのデモを披露するのは,今回の展示会が初めてだという。このほか企業向け次世代ルーターの新製品を初展示する予定。