当研究所では、グローバリゼーションをキーワードに、これからの企業基盤を考えています。第7回第9回では、IT部門の“見える化”を可能にするサービスカタログの作り方や、サービスカタログに付随する「Value Point(VAP)」の定義方法、サービスの品質について説明してきました。今回は、読者からの質問に答えるかたちで、サービス品質について再考してみます。

 第9回では、IT部門が提供するサービスに対する顧客満足度を確実に下げる「3悪」について紹介しました。それらは、次の三つです。

・IT部門内でのテスト時の不良
・社内顧客による検収時の不調
・社内顧客が希望する納期への遅れ

 また、IT部門がサービスを社内顧客に提供する前段階にあたるテスト工程について、どこで手戻りを把握するかについても説明しました。そうした内容について、読者の方から質問をいただきました。私の回答を含め、Webサイト上で公開されていますが、もう少し詳しくサービス品質について、考えてみましょう。

 いただいた質問はつぎのようなものです。原文のまま紹介します。

【質問】社内サポートの行ったサービスを見える化するにはどうしたらいいのか答えが出ずにおりましたが、この記事を見てこのやり方だと出来るのではないかと思いました。
 ただ、IT部門内テスト時の不良をマイナス計上するくだりが、理解できませんでした。これだと、バグをつぶす作業がすべてマイナス評価されてしまいませんか。それともこれは担当者が終了と判断したあとのテストのみマイナス計上するのでしょうか。また、部門内と部門外での不良発生時のマイナス値はそれぞれ重みを変えるのでしょうか。

 大変熱心に本連載を読んでいただき、ありがとうございます。ご質問も的を射ていると思います。この部分は「IT部門のパフォーマンス管理の見える化」について大変重要な部分ですので、もう少し具体的に説明しましょう。

ベンダー任せでは、QAプロセスなしと同等

 システム開発には、要件定義、上流設計、下流設計、開発、個体テスト、連結テスト、システムテストなど、様々な工程があります。これらの工程を経て、システムあるいは、それに基づくサービスが社内顧客に納入・提供されるわけです。

 各プロセスにおけるテストという視点は一旦おいておき、まずは社内顧客サービスが納入される前の、いわゆる、「IT部門内最終QA(品質管理)機能」の定義が必要になります。これらの機能が、みなさんの会社のIT部門内に存在しているでしょうか?

 このテストに携わる人員は、最初に定義した社内顧客の要求や業務に精通した人員でしょうか?もし、「IT部門内最終QA機能」が現在のプロセスに存在しないのなら、是非導入してください。でなければ、「実際の手戻り」を全く把握できないことになります。

 「IT部門内最終QA機能」のプロセスがあっても、ベンダーまかせで作られた提出書類の整合性をチェックするだけでは、最終QAのプロセスがないことと変わりありません。これでは、手戻りの把握どころか、提供しようとするサービスの品質保証について、IT部門が責任を持てません。