第3世代携帯電話(3G)モデムと無線LANルーターを内蔵した「ポータブル3Gホットスポット」が注目されている。5月に米ベライゾン・ワイヤレス,6月に米スプリント・ネクステルがバンドル提供を開始した。モバイル・ブロードバンドの普及に弾みを付ける一方で,公衆無線LANサービスに少なからぬ影響を与えそうだ。

(日経コミュニケーション編集部)


武田 まゆみ/情報通信総合研究所 研究員

 WAN側に3G回線を利用する小型無線LANルーターには,これまでも,イー・モバイルのUSBモデムにも対応した米クレイドルポイント・テクノロジーの「PHS300」など,USB端子やPCカード・スロットを持つ携帯電話対応の製品はあった。そこに,携帯電話のUSIM(universal subscriber identity module)カードを内蔵した3Gモデム一体型製品が登場した。米ノバテル・ワイヤレス製「MiFi 2200」である。

 このいわば「ポータブル3Gホットスポット」とでも呼ぶべき製品を,ベライゾン・ワイヤレスが5月に自社ブランドで販売を開始(写真1)。6月には,スプリント・ネクステルが販売を始めた。

写真1●ベライゾン・ワイヤレスが自社ブランドを付けて販売を開始した米ノバテル・ワイヤレス製「MiFi 2200」
写真1●ベライゾン・ワイヤレスが自社ブランドを付けて販売を開始した米ノバテル・ワイヤレス製「MiFi 2200」

クレジットカード大で4時間駆動

 ベライゾン・ワイヤレスはネットブックと無線データ通信のバンドル・サービスを開始した5月17日,同時にMiFi 2200の販売とそれに対応する無線データ通信プランの提供を始めた。いずれも,同社の無線データ通信サービスの需要喚起を狙ったものといえる。

 同社が販売するMiFi 2200は,WAN側がCDMA2000 1xEV-DO Rev.A,LAN側が無線LAN(IEEE 802.11b/g)に対応している。クレジットカードを8枚重ねたほどの大きさ(約90×60×10mm)で,重さもわずか約58gという超小型のきょう体に,3Gモデム機能とバッテリを搭載。バッテリ駆動時間は最大4時間程度,待ち受けは最大40時間で,Micro-USBポートで充電できる。無線LAN経由ではデバイスを5台まで同時接続でき,USBケーブルで有線モデムとしても利用できる。

 この小型製品をポケットやカバンに入れて持ち歩くだけで,利用者はベライゾンの3Gサービス・エリア内であれば,パソコンはもちろん,iPhoneなどのスマートフォンやゲーム機を無線LAN経由でインターネットに接続できるようになる。

ネットワーク管理アプリを標準搭載

 MiFi 2200は,ベライゾン・ワイヤレスのWebページでは「インテリジェント・モバイル・ホットスポット」と紹介されている(写真2)。自称「インテリジェント」が示すように,同製品にはLinuxベースのOSが搭載され,サード・パーティ製を含むアプリケーションを稼働させることもできる。ノバテルによれば,ネットワーク管理アプリケーションを標準搭載し,外部機器の自動接続やネットワークを介した自動同期,VPN(仮想閉域網)接続といったセキュリティ機能や認証機能などを装備しているという。

写真2●インテリジェント・モバイル・ホットスポット「MiFi 2200」の説明ページ
写真2●インテリジェント・モバイル・ホットスポット「MiFi 2200」の説明ページ

 MiFi 2200経由でスマートフォンを利用すれば,システム管理者は,これまでスマートフォンの各端末ごとにセキュリティ・アプリケーションをインストールしていた手間を省ける。

販売価格は2年契約で100ドル

 MiFi 2200の価格は,ベライゾン・ワイヤレスの無線データ通信サービスを2年契約することで50ドルの補助金が還元され,99.99ドルとなる。通信料金は,利用上限250Mバイトで月額39.99ドル(超過分は1Mバイト当たり10セント)のプランと,上限5Gバイトで月額59.99ドル(同5セント)のプランを選べる。これは,ネットブックのバンドル料金と同じだが,ほかにも15ドルの1日パスが用意されている。

 一方,6月から提供を開始したスプリント・ネクステルの場合は,端末価格はベライゾンと同じ2年契約で99.99ドル。ただし通信料金プランは,利用上限5Gバイトで月額59.99ドルと,所有する携帯電話の料金と利用上限5GバイトのMiFi 2200のデータ料金を合わせて月額149.99ドルの2種類となる。いずれも超過分は,1Mバイト当たり5セントとなっている。