田中 宏幸 氏
帝塚山大学 メディアセンター
情報教育研究センター課
田中 宏幸 氏

 システムアドミニストレータ(シスアド)は,企業内で自社が運用する情報システムの日常的な管理,運用,保守に関する作業を行う。ユーザーが利用するパソコンの管理やトラブル対応も役割の一つである。規模の大きい企業には専任のシスアドがいる場合もあるが,中小企業では他に担当業務を持つ社員が,シスアドを兼任することが多い。

 帝塚山大学のメディアセンター情報教育研究センター課に勤務する田中 宏幸氏は,同大学メディアセンターの運営業務とシスアドを兼任している。「専任ではないが,シスアドの業務がメイン」(田中氏)だという。情報処理技術者試験の「上級システムアドミニストレータ」資格を持ち,日本システムアドミニストレータ連絡会の副会長も務めている。

トラブル発生時は休日でも職場に急行

 田中氏の仕事は,同大学の情報システムの管理・運用や,新しいシステム導入の企画・立案,教員や学生が使うパソコンのトラブル対応などである。

 システムトラブルが発生すると,休暇中でも職場に駆けつける。田中氏が務める帝塚山大学周辺は落雷が多いため,落雷による停電や回線切断が発生しやすい。しかし田中氏は「何か問題解決に向かって作業しているときが一番充実しています。トラブル対応でも楽しい」という。

 シスアドには,情報システムの“伝道師”の役割もある。「新しい情報システムの導入を提案して,多くの人に使ってもらうのも仕事です。利用者が増えていくのがとても嬉しい」(田中氏)。

 田中氏は大学卒業後,システム開発会社に就職。プログラマ,営業支援などを経験した。開発,営業の業務を通じて顧客の声を聞くうちに,次第にシステムのユーザー側の技術に興味を持つようになったという。情報処理技術者試験の「初級システムアドミニストレータ」資格を取得したことをきっかけに,現職へ転身した。

 システム開発会社の経験は,現在のシスアドの仕事に役立っていると田中氏は話す。「システムを作る人の気持ちや,システム開発の一連の流れを知っていることは,システム導入の企画や,ベンダーにシステム改善要求をするときに役立ちます」(田中氏)。

 シスアドの仕事の苦労について田中氏は「一般的に,規模の小さい企業では一人のシスアドがシステム管理からトラブル対応まで一手に担っているため,問題を一人で抱え込んで孤立してしまうことが多い」と指摘する。田中氏が副会長を務める日本システムアドミニストレータ連絡会は,このようなシスアドの孤独を解消することを目的に,定期的に会員同士の交流会や研修会を開催し,シスアドが問題を共有したり相談したりできる窓口となっている。

 シスアドの業務には,システム管理能力やトラブル対応力が求められる。それらの知識レベルを認定していたのが,旧・初級/上級シスアド試験だが,初級は2009年春,上級は,2008年秋の試験を最後に廃止。現在は初級シスアド試験の後身として「ITパスポート試験」,上級シスアド試験の後身として「ITストラテジスト試験」が実施されている。

お仕事解説:システムアドミニストレータ

情報システムの利用者側のリーダー

 システムアドミニストレータ(シスアド)とは,情報システムの「利用者側」のリーダーである。情報処理技術者試験を実施しているIPA(情報処理推進機構)によると,初級シスアドとは「利用者側において,情報技術に関する一定の知識・技能を持ち,部門内又はグループ内の情報化を利用者の立場から推進する者」。上級シスアドとは「利用者側において,業務の中でどのように情報技術を活用すべきかについて判断するために必要な知識・技能を持ち,情報化リーダとして業務改革・改善を推進する者」のことである。

必要なスキル

  • IT全般の知識
    システム管理からパソコンのトラブル対応まで役割の幅が広いので,雑多にITを知っている必要がある。
  • ITパスポート試験/ITストラテジスト試験
    ある程度システム管理業務を経験したあとに,自分の知識を棚卸して整理するために試験を受けるとよい。