総務省は2009年8月25日,「IPv6によるインターネットの利用高度化に関する研究会 IPv4アドレス在庫枯渇対応に関する広報戦略ワーキンググループ」の第1回会合を開催した。近い将来枯渇すると言われるIPv4アドレスについて,IPv4アドレスの延命やIPv6アドレスへの移行について,誰にいつどのような広報をすればいいかを話し合うものである。今回はデジタル・テレビを開発・販売するパナソニックが,IPv4アドレス枯渇に対する考え方やIPv6への取り組みを報告した。

 パナソニックは,「IPv4アドレスが枯渇すると,テレビ向けネット・サービス『アクトビラ』やWebサイトが閲覧できるサービス『ビエラキャスト』を利用する機能を備えたデジタル・テレビが影響を受ける可能性がある」と指摘した。例えば,デジタル・テレビをIPv6に対応するためにネットワーク経由でファームウエアを更新する方法が考えられるが,「古い機種はハードウエアのリソース不足などの原因で,ファームウエア更新ができない可能性がある」という。

 ISPがIPv4アドレス枯渇の延命策としてLSN(Large Scale NAT)を導入した場合も,ユーザーの使用可能ポート数が絞られて,画像などがうまく表示できない可能性があるという。また,デジタル・テレビだけでなく,ハード・ディスク装置(HDD)を搭載したDVDレコーダーへの影響もあり得るという。「DVDレコーダーには,携帯電話機やパソコンを使って遠隔地から録画予約する機能を備えているが,LSNが利用されている場合は録画予約ができるか不透明である」という懸念を表した。

 このほか,接続検証にかかる時間やコストが看過できない規模になる恐れがあることも明らかにした。「現在商品を出荷する場合,ISPや回線の種類,ホーム・ルーターの種類をそれぞれ組み合わせて接続検証を実施している。これがIPv6アドレスも利用するようになると,利用しているアドレスはIPv4またはIPv6なのか,LSNを利用しているのかどうかなど要素が増え,組み合わせが膨大になる。コストがかかるだけでなく,検証自体が難しくなる」。

 最後に,「家電のユーザーにはIPv4やIPv6などまったく関係がない。ユーザーが何もせずに利用が継続できることが理想」として,ISPやホーム・ルーターを製造するベンダーに対して要望したい事項を列挙した。ISPに対しては,既存のユーザーに10年程度IPv4による接続を可能にする,IPv6対応時に対応機器の購入などユーザーの自己負担を回避する方策を講じること,LSNを利用しないなどである。ホーム・ルーターのベンダーに対しては,IPv4とIPv6の両方で利用できるルーターの開発,ファームウエア更新といったユーザーが現在利用しているルーターのIPv6対策の公開などである。